ミサリオ「負熱膨張微粒子」を研究|温めると縮むセラミック微粒子を樹脂に混ぜるイラスト

株式会社ミサリオ

ミサリオ「負熱膨張微粒子」を研究|研究領域=温めると縮む・セラミック微粒子/強み=粉砕と再結晶で・微粒子化/将来性=樹脂に混ぜて・熱膨張を抑える

企業紹介|株式会社ミサリオとは?

多くの物質が温めると膨らむなか、温めると縮む性質を持つ、粒径1ミクロン前後(1000分の1ミリ前後)のセラミック粒子「負熱膨張微粒子」。ミサリオは、その社会実装を目指す、名古屋大学発の素材系ディープテック企業です。名古屋大学の竹中康司教授が見いだした材料を、樹脂などに混ぜて熱膨張を抑える用途に向けて研究しています。

キーワード「負熱膨張微粒子」

「負熱膨張微粒子」は、温度が上がると縮む負熱膨張材料を、粒径1ミクロン前後の粉末にしたものです。樹脂など熱で膨らむ材料に混ぜ、膨らむ分を粒子の縮む分で打ち消します。ミサリオの標準組成「PyroAdjuster-M」は、0〜100℃で1℃あたり約60ppm(100万分の60)縮む粉末です。

市場課題|熱による膨張が部品に反りやひずみを生む

現状の熱膨張の課題|現状は、シリカを混ぜても熱膨張が残る|樹脂の熱膨張が・反りを招く/シリカでも・膨張が残る

樹脂の熱膨張が反りを招く

樹脂は熱で膨らみやすく、反りやひずみの原因になるとされる材料です。金属やセラミックスよりも熱膨張係数が大きく、半導体の封止材(半導体チップを樹脂で包んで守る材料)のように、樹脂とほかの材料を組み合わせた部品では、膨らみ方の差が接合部への負担になります。温度が変わるたびに部品の寸法が変わり、その負担が繰り返しかかります。

シリカでも膨張が残る

シリカを混ぜても、樹脂の膨張は残ります。シリカ(二酸化ケイ素の粉末)は樹脂より熱膨張が小さく、混ぜると全体の膨張を減らせます。それでも樹脂の膨張が残るのは、シリカ自体にも熱膨張があるためです。温度の変化が大きい環境では、残った膨張を十分に抑えられない場合があります。

他にも、製造装置の温度を厳密に保つ手間、パワー半導体(大きな電力を扱う半導体)の出力を下げて使う運用、精密装置を置く環境の温度管理、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 熱膨張係数温度が1℃上がったときに、長さや体積が元の値に対してどれだけの割合で変わるかを表す値である。値が大きい材料ほど、温度の変化で寸法が変わりやすい。負の値になる性質が負熱膨張である。

ミサリオの強み|「負熱膨張微粒子」を研究

ミサリオが「負熱膨張微粒子」を研究|これまでに、1ミクロン前後の微粒子を実現|粉砕と再結晶で・1ミクロン前後に/標準組成は・生体必須の元素で構成

粉砕と再結晶で微粒子化

竹中教授らが見いだした材料は、大学の実験室では10〜50ミクロンの粗い粉末で評価されていました。

ミサリオは、材料をボールミル(容器の中で球と一緒に回して砕く装置)で細かく砕いたあと、加熱して結晶性を回復させる粉砕・再結晶化法で、粒径1ミクロン前後の微粒子を得ています。砕いたあとに加熱して結晶性を回復させるため、細かくしても材料の性質を保ったままにできる点が、この手法の特徴です。一般に、粒子が小さいほど、薄い樹脂の層や細かな隙間にも混ぜ込みやすくなり、電子部品のような精密な部品にも使えるようになります。

生体に必須の元素で構成

大きな負熱膨張を示す従来の材料には、高価なルテニウムやスカンジウムを含むもの、有毒な鉛を含むもの、合成に高い圧力を要するものがあります。

ミサリオの標準組成「PyroAdjuster-M」は、ピロリン酸亜鉛マグネシウム(亜鉛とマグネシウムを含むリン酸の化合物)を主成分とし、亜鉛・マグネシウム・リンという生体必須の元素で構成された、酸化物(酸素と金属などの化合物)のセラミックスです。ミサリオは、この材料を、ルテニウム・スカンジウム・鉛を含む材料や高い圧力を要する材料に頼らず、樹脂へ混ぜて膨張を抑える材料として、半導体の封止材などへの利用を想定しています。実用化されれば、熱による反りやひずみを抑えられると期待されます。

FrontJournalの解説
  • 粉砕・再結晶化法材料を砕いて細かくしたあと、加熱して乱れた結晶を元の状態に戻す方法である。細かさと結晶の質を両立できる。

「負熱膨張微粒子」の未来|半導体の封止材から電子部品の現場へ

熱膨張を抑える微粒子が変える未来|真球状の微粒子で、熱膨張の制御を目指す|樹脂との・複合を確認/広い温度域の・タイプを用意/熱膨張を制御する・素材を目指す

樹脂への複合を確認

「PyroAdjuster」は、同社の発表資料によると、エポキシ樹脂との複合(混ぜ合わせて一体の材料にすること)を確認済みです。エポキシ樹脂は、半導体の封止材や電子部品の接着剤などに使われる樹脂。ミサリオが想定する用途の一つは、封止材です。樹脂に混ぜる量を変えると、全体の膨らみ方が変わります。

広い温度域のタイプも用意

「PyroAdjuster-C」は、銅・亜鉛・バナジウム・リンの酸化物を主成分とし、マイナス200〜400℃の広い温度域で縮むタイプです。1℃あたりの縮みは約12〜14ppmで、標準組成の「PyroAdjuster-M」(0〜100℃で約60ppm)より小さくなります。二つのタイプは、どちらも粒径約1.3ミクロンの微粒子です。使う温度の範囲に合わせて、組成を選べるようになります。

熱膨張を制御する素材を目指す

ミサリオは、熱による膨張を制御する素材を、電子部品などの現場へ届けることを目指しています。真球状の負熱膨張微粒子による熱膨張制御技術の開発に、名古屋大学のインキュベーション施設(起業を支援する施設)を拠点に取り組んでいます。球状の粒子は、一般に、樹脂に多く混ぜても流動性(流れやすさ)が落ちにくい形状です。微粒子を多く混ぜられれば、全体の膨張をより小さくできます。

会社概要|ミサリオの事業内容・設立背景

名古屋大学の研究成果を社会へ

株式会社ミサリオは、2022年7月1日に、名古屋大学の竹中康司教授が、自ら見いだした負熱膨張材料の社会実装を目指して設立しました。竹中教授は代表取締役社長を務めています。同年8月には、名古屋大学のインキュベーション施設内に、開発・製造・評価の拠点を設け、「PyroAdjuster」の有償提供を始めました。製品名「PyroAdjuster」は商標登録されています。本社は愛知県一宮市、事業部は名古屋市千種区の名古屋大学インキュベーション施設です。

採択・連携

2023年1月には、名古屋大学と共同で、粒径1ミクロン前後の負熱膨張微粒子の作製に成功したと発表しました。この成果は、文部科学省の科学研究費助成事業と、科学技術振興機構(JST)の支援を受けた研究に基づきます。2024年8月には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ディープテック分野での人材発掘・起業家育成事業(NEP)」のうち「躍進コース」の最終報告会(2024年8月27日)で最優秀賞を受けました。

資金調達

2022年度に、竹中教授が個人名義で、愛知県の創業支援事業費補助金(起業支援金)に採択されました。2024年度には小笠原敏晶記念財団のインキュベンチャー助成に、2026年2月には市村清新技術財団の新技術開発助成に採択されています。資本金は、2025年11月の増資後で780万円です。

会社情報

会社名株式会社ミサリオ(Misario Co., Ltd.)
所在地愛知県一宮市住吉2丁目1番地2
設立2022年7月1日
代表竹中康司(代表取締役社長)
資本金780万円(2025年11月の増資後)
事業負熱膨張微粒子「PyroAdjuster」の研究・製造・提供
技術領域負熱膨張材料、セラミック微粒子、熱膨張制御
採択愛知県 創業支援事業費補助金(2022年度・竹中康司個人名義)、NEDO NEP躍進コース 最優秀賞(2024年8月)、小笠原敏晶記念財団 インキュベンチャー助成(2024年度)、市村清新技術財団 新技術開発助成(2026年)
URLhttp://misario.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

多くの物質は温めると膨らみます。その常識に逆らい、温めると縮む材料を混ぜて膨張を抑える発想は、素材の側から熱の問題を解く取り組みだと感じました。1ミクロン前後への微粒子化と、生体に必須とされる元素での構成が、ミサリオの特徴です。この分野では、鉛を含まない負熱膨張物質で大きな収縮を達成した研究も報告されています。

半導体フォトカソード(光を当てると電子を放出する半導体の素子)で、光から電子ビームを取り出す装置を研究する株式会社Photo electron Soulも、同じ名古屋大学発の企業です。素材の熱による変化を抑える企業と、半導体の検査などに使う装置を研究する企業は、別の入口から半導体の産業を支えています。どちらも、大学の研究成果を産業へつなぐ試みといえます。

大学で見いだされた材料が、電子部品の現場で使われる日を、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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