2026.08.17 大阪大学・群馬大学・九州大学 元発表:2026.08.05

阪大・九大ら、脂質膜に熱に強い分子の島をつくる手法を開発

ニュース紹介

「プロペラ分子を用いて脂質膜の"海"に"島"をつくる」

大阪大学大学院理学研究科の岩田隆幸講師、群馬大学大学院理工学府の木下祥尚准教授、九州大学大学院理学研究院の松森信明教授、九州大学先導物質化学研究所の新藤充教授らの研究グループは、プロペラ型分子「トリプチセン」をもとに脂質様分子を設計・合成し、脂質膜の中に熱的に安定な「脂質ドメイン」をつくることに成功したと発表しました。作製した脂質様分子を天然リン脂質と混ぜて膜をつくり蛍光顕微鏡で観察したところ、30℃でトリプチセンを多く含む領域と含まない領域に分かれ、この状態は温度を上げても58℃まで保たれたとしています。X線回折測定により、トリプチセンを含むドメインはリン脂質2分子とトリプチセン脂質1分子の割合でできていることが分かりました。研究グループは、トリプチセン同士の羽が歯車のようにかみ合う「ギア効果」と、周囲の脂質が羽のすき間に入り込む糊としての働きが組み合わさることでドメインが安定すると説明しています。成果は米国科学誌 Journal of the American Chemical Society に2026年7月31日に公開されました。

出典:大阪大学・九州大学 2026年8月5日 プレスリリース
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/67072/26_0805_04.pdf

FrontJournalの解説

この研究分野について

細胞を包む膜は、主に脂質という分子でできています。この膜の中では、すべての分子が均一に混ざるのではなく、一部の分子が集まって小さな領域をつくることがあります。この領域は脂質ドメインと呼ばれ、膜タンパク質などの機能性分子をここに集めることで、さまざまな生命現象で役割を果たすことが分かってきています。

この性質を人工的に使えれば、機能性分子を膜全体にばらばらに置くのではなく、特定の場所に集めた材料をつくれます。触媒膜や吸着剤、薬を運ぶ材料などが応用先として挙げられています。

①脂質は混ざりやすく島ができにくい

脂質分子は互いに形や性質が似ているため混ざりやすく、脂質膜の中で安定したドメインを形成することは簡単ではありませんでした。従来はコレステロールによって脂質の鎖を整列させる方法や、水素結合などの分子間力を利用する手法が使われてきました。

研究グループは、これまでポリマーや液晶の分野で主に使われてきたトリプチセンという、3枚の羽を持つプロペラ型の分子に着目しました。この分子に油になじむ3本の長いアルキル鎖と、水になじむカルボン酸部分を取り付けて脂質様分子を設計・合成しています。

②歯車のかみ合いと糊の働きで安定させる

作製した分子を天然リン脂質と混ぜて膜をつくり蛍光顕微鏡で観察したところ、30℃でトリプチセンを多く含む領域と含まない領域に分かれました。この状態は温度を上げても58℃まで保たれたと報告されています。

X線回折測定により、ドメインはリン脂質2分子とトリプチセン脂質1分子の割合でできていることが分かりました。研究グループは、トリプチセン同士の羽が歯車のようにかみ合う働きと、周囲の脂質が羽のすき間に入り込んで糊のように固める働きが組み合わさることで、ドメインが安定に保たれると説明しています。

編集部からひとこと

膜の中に狙った領域をつくるという発想は、機能性分子を効率よく働かせるための土台になります。ポリマーや液晶で使われてきた分子を脂質膜へ持ち込んだという経緯が、研究者のコメントでも触れられています。58℃という具体的な耐熱の数値が示されており、実際の材料として使える条件を測る手がかりになります。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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