2026.10.26 │ 科学技術振興機構(JST) │ 元発表:2026.10.22

広島大学ら、輪っか状の高分子を精密につくる「リビング環拡大重合法」を開発

ニュース紹介

「「輪っか状」の高分子を精密につくる新手法~分子量や構造を制御できる「リビング環拡大重合法」を開発~」

広島大学大学院先進理工系科学研究科の茅原栄一特定教授、同大学院生の新井緒理さん、東京科学大学リサーチインフラ・マネジメント機構コアファシリティセンターの梶谷孝上席技術専門員らの研究グループは、両端がつながった「輪っか状」の高分子を精密につくる「リビング環拡大重合法」を開発しました。この方法では、輪の構造を保ったまま、材料となる小さな分子を順番に取り込ませます。

この方法により、分子量、そのばらつき、環状というつながり方を精密に制御した環状共役高分子の合成に成功しました。さらに、らせん構造を持つものや、性質の異なる部分をブロック状に組み合わせた環状高分子の合成にも成功しています。成果は2026年10月21日(ロンドン時間)に国際学術誌Nature Communicationsにオンライン掲載されました。

出典:広島大学・東京科学大学・科学技術振興機構(JST) 2026年10月22日 プレスリリース(掲載誌:Nature Communications/DOI: 10.1038/s41467-026-78466-0)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20261022/index.html

FrontJournalの解説

環状高分子とは

今回のテーマは「環状高分子」(小さな分子が多数つながって、両端のない輪になった高分子)です。高分子は小さな分子(モノマー)が多数つながってできています。一般的な高分子は両端がある「ひも状(線状)」ですが、両端がつながった環状のものもあり、ひも状とは異なる性質や機能を示すことがあります。

ただし、分子量(分子の重さ)やそのばらつき、構造を狙いどおりに制御して環状高分子をつくることは難しい状況でした。つながり方の違いを「トポロジー」(分子のつながり方の形)と呼び、これが性質に与える影響を調べるには、狙った環状高分子を精密につくれることが前提になります。

①輪を保ったまま、材料を1つずつ取り込む

研究グループが開発した「リビング環拡大重合法」は、輪の構造を保ったまま、材料となる小さな分子を順番に取り込ませる方法です。これによって輪が少しずつ大きくなり、分子量やそのばらつきを制御しながら環状の高分子を得られます。今回は、分子量、そのばらつき、環状というつながり方を精密に制御した環状共役高分子(電子が広く行き来できる構造を持つ高分子)の合成に成功しました。

②らせん構造やブロック状の環状高分子も合成

この方法では、らせん構造を持つ環状高分子や、性質の異なる部分をブロック状に組み合わせた環状高分子の合成にも成功しています。つながり方の違いが性質にどう影響するかを詳しく調べられるようになり、新しい光学・電子機能を持つ高分子材料の設計・開発につながることが期待されています。なお、本研究はJSTの「創発的研究支援事業」の支援を受けて行われました。

編集部からひとこと

環状高分子は性質が興味深い一方で、思いどおりにつくる手段が限られていました。分子量とつながり方を狙って制御できる合成法が示されたことで、トポロジーと性質の関係を系統的に比べる研究が進みやすくなります。材料開発の土台となる基礎手法の進展として、今後の応用研究に注目したい成果です。

FrontJournal編集部

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