合同会社GPIはジオポリマーでコンクリート補修材を開発する企業

合同会社GPI(ジーピーアイ)

GPI「ジオポリマー」を研究|研究領域=産業副産物を・原料に配合/強み=酸と熱に強く・注入しやすい/将来性=注入材から・床材や急結材へ

企業紹介|合同会社GPIとは?

コンクリートのひび割れを補修できる、無機の材料ジオポリマー」。合同会社GPIは、その社会実装を目指す、大阪公立大学発の材料系ディープテック企業です。ひび割れ注入材「LVP-n」や注入止水材「ジックストップGP」を、コンクリート構造物の補修の現場へ提供しています。

キーワード「ジオポリマー」

「ジオポリマー」は、アルミナシリカ粉末(アルミニウムとケイ素を含む粉)とアルカリ溶液の反応で硬化体(固まった材料)を生成する技術です。特徴は、原料の多くに産業副産物を利用しながら、耐酸性耐火性を備える点にあります。下水処理施設や工場のように酸にさらされる現場でも、コンクリートの補修に使えます。

市場課題|老朽化する構造物と扱いにくい補修材

現状のコンクリート補修の課題|現状は、老朽化が進み、補修材の扱いも難しい|老朽化した構造物が・一斉に増える/有機溶剤の材料は・管理の手順が煩雑

老朽化した構造物が一斉に増加

国内のコンクリート構造物は、建設から長い年月を経て、補修が必要な時期を一斉に迎えています。建設後50年以上が経過する道路橋の割合は、2023年3月の約37%から2040年3月には約75%へ、トンネルの割合は約25%から約52%へ高まる見込みです。補修の対象が同時に増えれば、限られた人手と予算での維持は難しくなります。

有機溶剤の材料は管理が煩雑

有機溶剤を含む補修材は、現場での管理に手間がかかります。引火性があるうえ、臭気や人体への影響に配慮した換気と火気の管理が要るため、作業の手順が増えます。確認する場面の多さは、現場の作業者にとって負担です。

他にも、コンクリートの補修には材料と工法の両面で課題が残ります。作業者の健康への負担、地中で進む下水道管渠(下水を流す管)の老朽化、複雑な工程を持つ工法が招く工期の長期化、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 有機溶剤常温で他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物を指す。塗料や接着剤の成分として広く使われる。引火しやすく、蒸気を吸い込むと健康に影響することがあるため、換気や火気の管理が求められる。

GPIの強み|「ジオポリマー」を研究

GPIが「ジオポリマー」を研究|今後は、酸に強い無機の材料で補修が可能に|無機の硬化体が・酸と熱に耐える/一つの注入材で・季節を問わず施工

無機の硬化体が酸に耐える

材料の耐久性が足りないと、補修した箇所は短期間で再び劣化し、繰り返しの補修を生みます。

同社が扱う「ジオポリマー」は、アルミナシリカ粉末とアルカリ溶液の反応だけで硬化する材料です。粉の原料には、フライアッシュ(石炭を燃やした後に残る灰)や高炉スラグ(製鉄の工程で生じる副産物)といった産業副産物を配合します。硬化した材料は無機酸と有機酸のどちらにも耐性を持ち、耐候性と耐熱性も備えた無機の硬化体です。下水処理施設や温泉施設のように酸にさらされる場所でも、酸に強い無機の材料で補修でき、現場の環境に合わせて材料を選び分ける負担が減ります。

一つの注入材で通年施工

ひび割れへ材料を注入する補修では、コンクリートの乾湿や気温によって注入のしやすさが変わり、条件ごとに材料を選び分ける手間があるといわれています。

同社は、低圧注入用のひび割れ注入材「LVP-n」を製品にしました。粘性が低いため微細なひび割れへ注入でき、乾いた箇所でも湿った箇所でも接着するため、事前の通水作業(注入前に水を流す作業)が要りません。気温による粘度の変化もほとんどないため、季節を問わず一つのタイプで施工できます。材料は無機の成分だけで構成されるため臭気と引火性がなく、注入時の発熱もほとんどありません。季節や現場の状態に合わせて材料を替える手間が減り、作業者は同じ手順で補修を進められます。

FrontJournalの解説
  • フライアッシュ石炭を燃やしたあとに残る灰のうち、集じん装置で回収した細かい粒子を指す。火力発電所で大量に生じる産業副産物であり、セメントやコンクリートの材料として利用されてきた。

ジオポリマーの未来|補修材料への応用

扱いやすい無機材料が変える未来|無機の補修材が、現場での手間を減らす|注入止水材が・漏水対策に使える/防食床材や急結材へ・用途が広がる/無機材料で・簡易な補修を目指す

止水材が漏水対策に使える

同社は、高圧注入用の注入止水材「ジックストップGP」(水を押し出しながら硬化する止水材)を製品にしています。この材料は水中で分離せず比重が大きい(水より重い)ため、ひび割れの内部にたまった水を押し出しながら硬化します。発泡しないため膨らむ力でコンクリートを傷めることがなく、収縮も小さい材料です。地下の構造物や水を扱う施設で起きる、漏水の補修に使えます。

防食床材や急結材へ広がる

防食床材や急結材といった試作段階の材料へ、同社は開発の範囲を広げています。防食床材は、硫酸に加えて有機酸にも耐え、施工からおよそ2時間で床を使い始められる材料で、工場や家畜の施設での利用を見込みます。急結材は1分から10分ほどで硬化し、上水や下水の現場での利用を見込む材料です。試作の被覆材は、コンクリート構造物の防食や美観を目的とし、通気性と透湿性を備えます。

無機材料で簡易な補修を目指す

目指すのは、安全で耐久性があり、簡単に施工できる無機の補修材をそろえることです。その土台には、コンクリートに物性(かたさや伸び縮みなどの性質)の近い材料で補修するという考え方があります。その延長にあるのが、接着材やパネル材といった研究段階の材料です。補修の材料が扱いやすくなれば、老朽化した構造物を手入れしながら長く使い続けられます。

会社概要|GPIの事業内容と設立背景

大阪公立大学発として設立

合同会社GPIは、2019年4月に設立されました。拠点は、大阪市住吉区杉本にある大阪公立大学インキュベータ(大学が起業を支援するために設ける施設)内です。大阪公立大学の一覧には、同社が大学発ベンチャーとして載っています。新しい無機技術によるコンクリート補修材料の企画と開発が、同社の事業です。コンクリート構造物の補修については、材料も工法もまだ十分に確立されていないという課題認識が、出発点にあります。

大学と企業が研究に協力

同社は、研究機関や企業の協力を得て開発を進めています。協力研究機関には、大阪公立大学工学部と三重大学工学部が挙げられています。企業では、日本ジッコウ株式会社と注入止水材「ジックストップGP」を共同開発しました。補修材の開発には、材料の研究と現場の施工の双方の知見が要ります。

補修材を開発し現場へ供給

同社は、ひび割れ注入材「LVP-n」と注入止水材「ジックストップGP」を製品として供給しています。「LVP-n」は低圧注入でひび割れを埋め、「ジックストップGP」は高圧注入で漏水を止めます。被覆材、防食床材、急結材は試作の段階にあり、接着材とパネル材は研究の段階です。製品と試作、研究を並行して進めています。

会社情報

会社名合同会社GPI(GPI LLC)
所在地大阪府大阪市住吉区杉本3丁目3番138号 大阪公立大学インキュベータ内
設立2019年4月
事業新しい無機技術によるコンクリート補修材料の企画・開発。ひび割れ注入材「LVP-n」(低圧注入用)。注入止水材「ジックストップGP」(高圧注入用)。被覆材、防食床材、急結材は試作、接着材、パネル材は研究の段階
技術領域ジオポリマー(アルミナシリカ粉末とアルカリ溶液による硬化体)。フライアッシュ・高炉スラグなど産業副産物の配合。硬化時間と可使時間(混ぜてから使える時間)の調整。耐酸性、耐火性、耐候性、耐熱性
連携大阪公立大学工学部。三重大学工学部。日本ジッコウ株式会社(注入止水材「ジックストップGP」を共同開発)

編集後記|FrontJournal編集部より

国内のコンクリート構造物は、建設後50年を超える割合が2040年3月に向けて大きく高まります。補修の需要が積み上がる一方で、現場で使われてきた材料には、引火性や臭気、短期間での再劣化といった扱いにくさが残ってきました。GPIは、その材料そのものを無機の側から作り替えようとしています。

注目したいのは、産業副産物を原料に使うという資源の話と、乾湿や気温を問わず注入できるという現場の話が、一つの材料の中でつながっている点です。使う人の手間が減れば、点検で見つけたひび割れへ早く手を打てるようになります。酸にも熱にも強い硬化体は、点検と補修を繰り返しながら構造物を使い続ける現場を支える材料です。

製品から試作、研究へと段階の違う材料を並べる同社が、老朽化と向き合う現場をどこまで支えられるのか、今後の展開に期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。