コウソミル「膵臓がん血液検査」を開発|膵臓のイラスト

コウソミル株式会社

コウソミル「膵臓がん血液検査」を開発|研究領域=血液で膵臓がんの・手がかりを調べる/強み=酵素の働きを・1分子ずつ測る/将来性=健診での活用と・薬事承認を目指す

企業紹介|コウソミル株式会社とは?

血液から膵臓がんの早期発見を目指す技術として、注目を集める「膵臓がん血液検査」。コウソミル株式会社は、その社会実装を目指す、東京大学発のバイオ系ディープテック企業です。研究目的の検査「エンゼバー®すい臓がん」を、臨床研究への参加を条件に医療機関へ提供しています。

キーワード「膵臓がん血液検査」

「膵臓がん血液検査」は、採血した血液から膵臓がんの手がかりを調べる検査で、結果だけでがんかどうかを確定するものではありません。同社の検査の特徴は、血液中の酵素(反応を進めるタンパク質)の働きの強さを、1分子ずつ測れる点にあります。健診での活用を目指す臨床研究も始まっています。

市場課題|膵臓がんは症状が乏しく、早期に見つける手段が限られる

現状の膵臓がん発見の課題|現状は、症状が乏しく、早期の血液指標も限られる|症状が乏しく・進行して見つかる/早期発見の・血液指標が限定的

症状が乏しく進行して見つかる

膵臓がんは特異的な症状に乏しく、多くが進行した段階で診断されます。進行すると予後(病気の経過の見通し)が厳しく、5年生存率は低いがんの一つとされる一方、早期に見つかれば根治を望める疾患でもあります。予後の改善には早期の診断が欠かせないとされますが、症状が出てからでは遅れやすい状況です。

早期発見の血液指標が限定的

膵臓がんの早期発見に役立つ血液のバイオマーカー(病気の有無や状態を示す体内の物質)は、確立が課題です。現状、膵管(膵液の通り道)の拡張や膵臓の萎縮、糖尿病の悪化が、早期発見の契機として注目されています。症状のない人を調べるスクリーニングには、高い精度と、体への負担の小ささを両立する検査が求められます。

他にも、かかりつけ医と専門病院が連携する体制整備、健診施設と精密検査施設が連携する評価研究の少なさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • スクリーニング症状のない人を対象に、病気の疑いがある人を絞り込む検査を指す。病気かどうかを確定する検査ではなく、精密検査が必要な人を見つけることが目的である。判別の精度が重要になる。

コウソミルの強み|「膵臓がん血液検査」を開発

コウソミルが「膵臓がん血液検査」を開発|現在は、1分子計測で研究目的の検査を提供|1分子ずつ測り・微量な変化を捉える/酵素の働きから・病気を探る

1分子単位で微量な変化を捉える

従来のELISA法(抗体を使ってタンパク質の量を測る方法)は、検出に多数の分子が必要とされる方式で、微量な変化は捉えにくい面があります。

同社の「1分子計測リキッドバイオプシー」(体液から病気の情報を調べる検査)は、直径3μmの穴が多数並ぶ基板(マイクロデバイス)に、希釈した血液と蛍光性酵素基質(酵素に分解されると光る化合物)を入れて測る方式です。酵素は確率的に1個か0個ずつ穴に入り、基質を分解した穴だけが光るため、光る穴の数から酵素の分子数を、光の強さから活性(働きの強さ)を読み取れます。分子を1つずつ分けて測るので、わずかな変化も捉えることができます。測定に必要な血液は、1μL(1mLの千分の1)程度の少量です。

酵素の働きから病気を探る

従来の血液検査には、遺伝子やタンパク質の量を測る方式が多く、量の変化だけでは病気の状態の変化を捉えられない場合があります。

同社が指標に選ぶのは、タンパク質のうち酵素の活性(働きの強さ)です。酵素は細胞の中で反応を進める役割を担うので、働きの強さは、量より病気の状態に近い情報と考えられています。複数の色の基質を使うと、同じ酵素のわずかな違い(亜型)も区別が可能です。活性は光の強さの数値として得られ、膵臓がんの検査では、膵臓に関わる複数の酵素の活性を組み合わせて調べます。量の変化だけでは見えない病気の手がかりを探ることができます。

FrontJournalの解説
  • 蛍光性酵素基質酵素に分解されると蛍光を発する化合物を指す。酵素ごとに分解する基質が異なるため、光の強さから狙った酵素の活性を測定できる。複数の色の基質を使うと、同じ酵素の亜型も区別できる。

膵臓がん血液検査の未来|健診での活用と薬事承認へ

膵臓がん血液検査が変える未来|健診での活用と薬事承認を目指す|研究目的で・検査を提供開始/目標1万名の・臨床研究を開始/薬事承認と・米国展開を目指す

研究目的の検査を提供開始

コウソミルは2025年7月から、研究目的の検査「エンゼバー®すい臓がん」の提供を始めています。社内データでは、学習用の検体で作った検査式(判定の計算式)を、別の4施設の検体(膵臓がん48例、がんのない対照133例)で評価し、感度(がんのある人の陽性の割合)は75.0%、特異度(がんのない人の陰性の割合)は95.5%でした。この数値は症例と対照の比較で、健診での性能を示すものではありません。検査結果は診断に用いることができません。

目標1万名の臨床研究を開始

2026年3月には、健診で膵臓がんの発見率を確かめる前向き臨床研究(参加者を登録して経過を追う研究)で、第1例目の登録が完了しました。「エンゼバーフィージビリティ研究」は、健診の受診者を対象に、目標10,000名の登録を掲げています。2026年3月4日現在、全国79施設が実施体制に加わっています。運営事務局は、コウソミルです。

薬事承認と米国展開を目指す

同社が目指すのは、体外診断用医薬品(検査薬)としての「エンゼバー®すい臓がん」の、国内外での薬事承認(国の審査を経た承認)です。2025年8月には、体外診断用医薬品の製造販売業許可(事業者への許可で、製品の承認は別)を東京都から取得しました。米国では食品医薬品局(FDA)と相談を行い、他のがん種の検査の開発にも着手しています。承認を得て検査が広がれば、症状が出る前の段階で膵臓がんを調べる選択肢が、健診の場に加わります。

会社概要|コウソミルの事業内容・設立背景

東京大学の研究から事業化

コウソミル株式会社は、2022年4月に設立されました。事業の起点は、東京大学大学院薬学系研究科の小松徹准教授が持つ酵素活性の蛍光検出技術と、理化学研究所の渡邉力也主任研究員が持つ1分子計測技術を組み合わせた「1分子計測リキッドバイオプシー」です。創業者は、技術開発を担う坂本眞伍氏(最高技術責任者)と、鏡味優氏(代表取締役)です。小松氏と渡邉氏は、共同創業者として加わっています。

受賞と採択と共同研究の実績

2023年8月には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とJST(科学技術振興機構)主催の「大学発ベンチャー表彰2023」で、JST理事長賞を受賞しました。2024年3月にはNEDOのディープテック・スタートアップ支援事業に採択されました。検査の開発では神戸大学の消化器内科と共同研究を行い、検査の受託業務では株式会社ビー・エム・エルと連携しています。

シリーズA1で日米展開を進める

2026年2月にシリーズA1の資金調達を実施し、デライト・ベンチャーズが出資を主導しました。シリーズA1は、シリーズAに区分される資金調達ラウンドで、アニマルスピリッツとごうぎんキャピタルが新たに加わり、ANRIとグリーンコアも引き続き参画しています。調達した資金は、薬事承認申請を見据えた臨床開発と、米国向けの研究・臨床・事業開発の体制整備に充てる予定です。

会社情報

会社名コウソミル株式会社(Cosomil, Inc.)
所在地東京都文京区本郷七丁目3番1号 東京大学アントレプレナープラザ
設立2022年4月1日
代表代表取締役 鏡味優。最高技術責任者 坂本眞伍。共同創業者 小松徹(取締役・技術顧問、東京大学大学院薬学系研究科 准教授)、渡邉力也(アドバイザー、理化学研究所 主任研究員)
資本金59,987,045円
上場未上場
従業員27名(2026年10月1日現在)
調達プレシリーズA(2023年11月)はCoral Capital、ANRI、グリーンコア。シリーズA1(2026年2月)はデライト・ベンチャーズがリードし、アニマルスピリッツ、ごうぎんキャピタル、ANRI、グリーンコアが参加。個人投資家も出資
事業疾患の早期診断薬の開発(膵臓がんの研究目的の検査「エンゼバー®すい臓がん」の検査業務。診断には用いない)。医薬品開発支援。体外診断用医薬品製造販売業の許可を取得(2025年8月)
技術領域1分子計測リキッドバイオプシー(1分子の酵素活性計測)。論文は『Science Advances』(2020年)、『Cell Reports Methods』(2024年)、『Cell Biomaterials』(2026年)に掲載
連携東京大学。理化学研究所。神戸大学。株式会社ビー・エム・エル
採択JST 大学発新産業創出プログラム(START)の支援を経て設立(2022年)。大学発ベンチャー表彰2023 科学技術振興機構理事長賞(2023年8月)。NEDO ディープテック・スタートアップ支援事業(DTSU)STSフェーズ(2024年3月)。日本貿易振興機構(JETRO)Beyond JAPAN Deep Techコース(2024年)。週刊東洋経済「すごいベンチャー100 2025年最新版」厳選8社(2025年10月)
URLhttps://cosomil.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

血液に含まれる酵素の働きを1分子ずつ数えて、病気の手がかりにする。コウソミルは、薬学の酵素の検出技術と、工学の1分子計測技術が組み合わさって生まれた企業です。異なる分野の研究が、1つの検査に結びついています。

膵臓がんは、症状が出にくく、早い段階で調べる手段が求められてきた分野です。研究目的の検査の提供と、大規模な臨床研究を並べて進める姿勢は、検査の価値を実際の健診の場で確かめる取り組みだと感じます。使われる場面まで見据えています。

症状が出る前に膵臓がんの手がかりが得られる日が来れば、健診で調べられる疾患の範囲が広がります。承認に向けた歩みを、楽しみに見守りたいところです。東京大学から生まれたほかの企業は、東京大学発スタートアップ10選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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