F.I.W.「トラウマケア」を研究|心理士が指を左右に動かし、クライアントが目で追うイラスト

合同会社F.I.W.(エフアイダブリュー)

F.I.W.「トラウマケア」を研究|研究領域=つらい記憶を・心理療法で整理/強み=EMDRで記憶を整理・自宅からも受けられる/将来性=誰もが受けられる・ケアを目指す

企業紹介|合同会社F.I.W.とは?

心に残ったつらい体験の記憶を、心理療法を用いて整理する方法として、ニーズが広がる「トラウマケア」。合同会社F.I.W.は、その社会実装を目指す、新潟大学発のメンタルヘルス系ディープテック企業です。新潟市の「カウンセリングオフィスVISION」で、大人と子どもに向けたカウンセリングとトラウマケアを、対面とオンラインで提供しています。

キーワード「トラウマケア」

「トラウマケア」は、虐待や犯罪被害などのつらい体験で心に残った傷(心的外傷)に向き合う心理的な支援です。トラウマの記憶はほかの記憶のように整理されずに長く残り、フラッシュバック(体験の場面が突然よみがえる症状)や不安、不眠などを引き起こすことがあります。ケアでは心理療法を用いて、残った記憶の整理を進めます。

市場課題|トラウマの症状が長く続き、必要な人ほどケアを受けにくい

現状のトラウマケアの課題|現状は、症状が長引き、重症者ほどケアに通いにくい|症状が長引き・生活に支障/重症者ほど・通うのが困難

症状が長引き生活に支障

つらい体験の記憶は、長い期間にわたって心身に影響を残し、生活を妨げることがあります。国内の調査では、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っていた期間は平均で4年9ヶ月余りで、養育者から身体的虐待を受けた人では25年9ヶ月に及びました。症状が長引くと、不安や不眠、アルコールなどへの依存に悩む状態が続き、仕事や通学を続けにくくなる恐れがあります。

重症者ほど通うのが困難

重いトラウマを抱える人ほど、オフィスや医療機関へ通ってケアを受けること自体が困難です。対人恐怖から、外出や人と顔を合わせることが難しくなる場合があるためです。その結果、ケアを最も必要とする人ほど、ケアを受けにくい状況が生まれています。

他にも、ケアの費用を払う経済的な余裕の不足、対人トラブルをきっかけとする不登校、ゲームへの依存、教育や福祉の現場で対応に悩むケース、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • PTSD心的外傷後ストレス障害のことである。生命の危機にさらされるような出来事を経験した後に発症する。悪夢や回避などの症状が1か月以上続き、生活に支障をきたしている場合に診断される。

F.I.W.の強み|「トラウマケア」を研究

F.I.W.が「トラウマケア」を研究|現在は、研究の知見でトラウマケアを提供|EMDRで・記憶を整理/自宅から・受けられるケア

EMDRで記憶を整理

トラウマの治療では、つらい出来事を言葉にして人に伝えること自体が、大きな負担になる場合があります。

同社のトラウマケアは、代表の臨床と研究の知見を基に、複数の心理療法を組み合わせたものです。その一つのEMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)は、目を左右に動かすなどの左右交互の刺激(両側性刺激)を用いて記憶を処理する手法で、脳本来の情報処理を促すと考えられています。これに組み合わせる技法の一つが、TSプロトコル(フラッシュバックの軽減に焦点を当てた簡易型の技法)です。EMDRでは出来事をすべて細かく語らなくても記憶の整理を進められるといわれ、話すことが負担だった人もケアを始めやすくなります。

自宅から受けられるケア

対面のカウンセリングはオフィスまで通う必要があり、外出が難しい人や遠方に住む人には不向きです。

同社は、個別のカウンセリングとトラウマケアを、オンラインでも提供しています。時間と料金は対面のケアと同じで、新潟県外や海外からの利用も可能です。英語とインドネシア語でケアを提供する医師も在籍し、日本語以外で相談したい人にも対応しています。日本語と英語で開く少人数のグループセラピーも、オンラインでの参加が可能です。新潟駅の近くのオフィスへ通う負担がなくなり、自宅にいながらトラウマケアを受けられるようになります。

FrontJournalの解説
  • EMDR眼球運動による脱感作と再処理法である。眼球運動などの左右交互の刺激を用いて、脳が本来持つ情報処理の働きを促す心理療法である。PTSDに対してエビデンスのある心理療法とされる。

トラウマケアの未来|補助と研修で、ケアの届く範囲を広げる

身近なトラウマケアが変える未来|補助と研修で、ケアの届く範囲を広げる|協会の補助で・費用を軽減/教員や心理士に・知見を提供/誰もが受けられる・ケアを目指す

協会の補助で費用を軽減

経済的に余裕のない人に向けて、同社は補助を利用したトラウマケアを提供しています。NPO法人(特定非営利活動法人)新潟トラウマ治療協会の審査で補助が決まった場合、ケアの費用は全額が協会から同社へ支払われ、補助の財源は個人や法人からの寄付です。利用者の負担は、1回ごとに協会へ納める3,000円の寄付です。対象は新潟県内に住む大人と子どもで、費用の面でケアをあきらめていた人にも道が開かれています。

教員や心理士に知見を提供

同社は、学校の教員や心理士など、現場の支援職に向けて、トラウマケアの知見を届けています。心理士や相談員を対象としたケーススーパーバイズ(担当する事例への助言)や、企業や学校での出前講座を提供中です。代表の杉本篤言は、2026年11月4日の「第64回全国大学保健管理研究集会」で、トラウマケアの教育講演を行います。現場でトラウマへの理解が深まれば、子どもや学生の不調に早く気づき、ケアへつなげやすくなると期待されます。

誰もが受けられるケアを目指す

同社は、重症度や経済的格差を越えて、すべての人にトラウマケアを提供することを目指しています。軽いトラウマから最重度の被害まで、知識と経験を持つスタッフが対応する体制です。対象は子どもから経営者や企業の社員まで広く、ケアの形も個別、グループ、オンラインと複数あります。トラウマを抱えて働く人や学ぶ人が、状態に合ったケアを身近に選べるようになれば、不登校や休職で社会から離れる人を減らすことにつながると期待されます。

会社概要|児童精神科医が設立した新潟大学発のF.I.W.

児童精神科医が2023年設立

合同会社F.I.W.は、2023年10月に設立されました。代表社員の杉本篤言は、新潟大学大学院医歯学総合研究科の地域精神医療学講座で特任准教授を務める児童精神科医です。児童精神科の診療で多くのトラウマ症例を担当し、発達障害の脳画像研究や、いじめの予防と介入の研究にも取り組んできました。臨床で培ったトラウマケアの手法を心理士に指導し、自らもカウンセリングとトラウマケアを担当しています。

新潟大学発ベンチャーに認定

同社は、「新潟大学発ベンチャー称号認定制度」の第9号に認定され、2024年4月5日に称号記を授与されました。この制度は、大学の研究成果や技術を実社会に還元するために設立されたベンチャー企業を支援するものです。杉本は、2024年1月からNPO法人新潟トラウマ治療協会の理事長も務めています。同社は協会から業務委託を受け、経済的に余裕のない人へのケアを担っています。

個人から企業まで幅広く対応

同社は、新潟駅の近くで「カウンセリングオフィスVISION」を運営しています。ケアを担当するのは、公認心理師などの資格を持つ心理士と医師です。企業からの依頼にも応じており、社員向けのカウンセリングは福利厚生として利用できます。経営者やアスリート、アーティストに向けたケアも用意し、医療・福祉・教育関係の職員を対象とした研修やセミナーも実施しています。

会社情報

会社名合同会社F.I.W.(F.I.W. LLC)
所在地新潟県新潟市中央区花園1丁目4番6号
設立2023年10月
代表代表社員 杉本篤言(新潟大学大学院医歯学総合研究科 地域精神医療学講座 特任准教授)
事業「カウンセリングオフィスVISION」の運営(カウンセリング・トラウマケア・グループセラピー・オンラインカウンセリング)。医療・福祉・教育関係職員の研修・セミナー。出前講座
技術領域トラウマケア(EMDR、TF-CBT(トラウマに焦点を当てた認知行動療法)、IFS(内的家族システム療法)、TSプロトコルなどの心理療法を組み合わせたケア)
連携新潟大学(教職員等ベンチャー)。NPO法人新潟トラウマ治療協会(業務委託)
採択新潟大学発ベンチャー称号認定 第9号(2024年4月)
URLhttps://vision-fiw.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

トラウマの記憶は、整理されないまま何十年も残り、今の暮らしに影響し続けることがあります。F.I.W.を調べて印象に残ったのは、重い症状を抱える人ほど通うことが難しく、費用の面でもケアから遠ざかりやすいという課題に、正面から向き合っている点です。補助の仕組み、オンラインでのケア、支援職への研修は、どれもケアを届ける経路を増やす工夫だと感じました。

大学の臨床と研究から生まれた知見が、新潟駅の近くのオフィスを通じて一人ひとりに届く。その形に、大学発ベンチャーの一つの姿を見た気がします。新潟大学から生まれたほかの企業は、新潟大学発スタートアップ10選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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