北海道マリンイノベーション「北大海洋栽培」を研究|函館の海でガゴメ昆布を育てる契約栽培を描いたイラスト

北海道マリンイノベーション株式会社

北海道マリンイノベーション「北大海洋栽培」を研究|研究領域=環境条件を制御し・計画的に栽培/強み=約6か月で収穫し・フコイダンが豊富/将来性=食品や化粧品の・原料供給へ

企業紹介|北海道マリンイノベーション株式会社とは?

函館の海でしか採れない海藻を、計画的に育てる技術として注目を集める「北大海洋栽培」。北海道マリンイノベーション株式会社は、その社会実装を目指す、北海道大学発のバイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。契約栽培(あらかじめ取り決めた条件で生産を委託する方式)したガゴメ昆布「北大ガゴメ」を、健康食品や化粧品のメーカーへ原料として提供しています。

キーワード「北大海洋栽培」

「北大海洋栽培」は、ガゴメ昆布の種苗(海に出す前の若い海藻)を育てる環境条件を制御し、短い期間で収穫まで運ぶ栽培の方法です。一般的な養殖では収穫までに1年6か月を要しますが、この方法では約6か月で収穫できます。函館の海で、原料に使えるガゴメ昆布を計画的に確保できます。

市場課題|ガゴメ昆布は自生する海域が狭く、収穫までの期間も長い

現状のガゴメ昆布の課題|現状は、自生域が狭く収穫まで時間がかかる|自生域は函館近郊に・限られる/収穫まで1年6か月を・要する

自生域は函館近郊に限られる

ガゴメ昆布は、函館近郊の限られた海域にのみ自生する海藻です。カゴの目に似た表面の凹凸と、真昆布より強い粘りが特徴ですが、採れる量はその年の天然の資源量に左右されます。磯焼け(海藻の群落が衰退したまま回復しない現象)が広がる海域もあり、原料に回せる量をそろえにくくなっています。

収穫まで1年6か月を要する

天然の採取から養殖に切り替えても、収穫までには長い期間が必要です。一般的な養殖では、種苗を海へ出してから収穫できるまでに1年6か月ほどかかり、その間は水温や波の影響を受け続けます。期間が長いほど、採れる量も含まれる成分も読みにくくなり、健康食品や化粧品の原料として安定して供給しにくくなります。

他にも、収穫した海藻を産地で加工する設備の不足、粘りの強さを保ったまま乾かす乾燥工程の難しさ、産地から加工先まで運ぶ流通の手間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ガゴメ昆布北海道の函館近郊に自生するコンブ科の海藻である。表面にカゴの目に似た凹凸があり、水に溶ける粘りの成分を多く含む。かつては真昆布の生育を妨げる海藻として扱われていた。

北海道マリンイノベーションの強み|「北大海洋栽培」を研究

北海道マリンイノベーションが「北大海洋栽培」を研究|今後は、安定した原料供給が可能に|環境条件の制御で・計画栽培/約6か月で収穫し・粘りを高める

環境条件の制御で計画栽培

天然の群落から刈り取る方法では、その年の海の状態がそのまま収穫量に表れます。

同社は、北海道大学大学院水産科学研究院が開発した「北大海洋栽培」を、函館の海で実際の生産規模へ広げています。この方法では、種苗を育てる段階から水温や光といった環境条件を整え、成長を促します。育てる生産者と契約してガゴメ昆布を引き取り、「北大ガゴメ」の名称で原料として供給するのが同社の役割です。天然の採取と違い、育てる面積と時期から収穫量を見積もれる点が特徴です。原料を使う側は必要な量を先に見込めるため、急な欠品の負担が小さくなります。

約6か月で収穫し粘りを高める

養殖の期間が長くなるほど、育てる海面を長く占有し、1年あたりの収穫回数も限られます。

「北大海洋栽培」で育てたガゴメ昆布は、収穫までの期間が約6か月です。一般的な養殖に要する1年6か月の、およそ3分の1にあたります。育つ期間が短い一方で、粘りのもとになるフコイダン(水に溶ける多糖類)は、天然のガゴメ昆布より多く含まれるとされています。フコイダンは水分を抱え込む力が強く、美容や健康の素材として使われる成分です。同じ重さの海藻からより多くのフコイダンが取れれば、メーカーは成分量をそろえたまま、商品1つあたりに使う原料の量を抑えられます。

FrontJournalの解説
  • フコイダン褐藻の粘りのもとになる、水に溶ける多糖類である。水分を抱え込む力が強く、保湿の素材として化粧品や健康食品に使われる。含まれる量は海藻の種類と育ち方で変わる。

北大海洋栽培の未来|食品と化粧品への応用

計画して育てる海藻が変える未来|食品と化粧品へ応用が広がる|化粧品と食品に・商品化/サプリメントへ・供給が広がる/海藻資源の安定供給を・目指す

化粧品と食品に商品化

「北大ガゴメ」は、すでに化粧品と食品の原料として商品になっています。2017年12月には、函館の店舗で石けん・美容液・パックのテスト販売が始まりました。食品では、細切り昆布やプレミアム粉末といった加工品が販売されています。育てた海藻が、手に取れる日用品として消費者のもとへ届いています。

サプリメントへ供給が広がる

供給先は、サプリメントの分野へも広がっています。2020年12月には、企画と販売を担うゴーゴーゴー、北海道大学との産学連携によるサプリメントの商品化が発表されました。同社はその体制で、原料となるガゴメ昆布の生産を受け持ちます。粒として飲める形になれば、海藻を食べ慣れない人にも成分が届きます。

海藻資源の安定供給を目指す

同社が目指すのは、海藻資源を安定して供給できる仕組みを整えることです。同社は、本社を置く函館市国際水産・海洋総合研究センター(函館市が設けた水産・海洋分野の研究拠点)で、北大ガゴメの特徴を活かした化粧品原料の研究開発に取り組んでいます。海藻粉末などの加工原料の供給と、産地から加工先へ届ける流通方法も、同社が受け持つ研究の対象です。採れる量に左右されずに原料が手に入れば、函館の浜の仕事は続けやすくなり、食卓や化粧品の棚にも道産の海藻が並び続けます。

会社概要|北海道マリンイノベーション株式会社の事業内容・設立背景

函館の研究拠点で設立

北海道マリンイノベーション株式会社は、2017年6月30日に設立されました。本社は、北海道函館市弁天町の函館市国際水産・海洋総合研究センターに置いています。代表取締役は布村ヒロミ氏です。同社は、ガゴメ昆布をはじめとする海藻資源の活用に取り組み、資源量の調査、生産方法の設計、原料供給源の確保、海洋コンサルティング、海藻加工品の販売を手がけています。

北海道大学の認定ベンチャー

同社は、北海道大学に認定されたベンチャー企業です。原料に使うガゴメ昆布は、北海道大学大学院水産科学研究院が開発した栽培技術で育てています。「北大ガゴメ」は北海道大学の登録商標です。生産と品質管理は海藻活用研究会(函館の産学官が連携して海藻の産業化に取り組む団体)が担い、同社は契約栽培と原料の供給、商品開発を受け持ちます。2020年12月には、ゴーゴーゴー、北海道大学との産学連携が発表されました。

原料供給を軸にした事業

同社の事業の軸は、原料の供給です。契約栽培したガゴメ昆布を乾燥や粉末などへ加工し、健康食品や化粧品のメーカーへ原料として届けます。北大ガゴメを使った石けんや食品といった自社商品も、販売の対象です。原料は、粉末や細切りなど加工先の用途に合わせた形で出荷されます。資本金は500万円、正社員は3名です。

会社情報

会社名北海道マリンイノベーション株式会社
所在地北海道函館市弁天町20-5 函館市国際水産・海洋総合研究センター104号室
設立2017年6月30日
代表布村 ヒロミ(代表取締役)
資本金500万円。法人番号 9440001008139
従業員正社員3名
事業ガゴメ昆布など海藻資源の資源量調査。生産方法の設計と原料供給源の確保。海洋コンサルティング。海藻加工品の販売。「北大ガゴメ」の契約栽培と原料供給
技術領域北海道大学大学院水産科学研究院が開発した「北大海洋栽培」によるガゴメ昆布の栽培。フコイダンを含む海藻素材の加工
連携北海道大学(「北大ガゴメ」は北海道大学の登録商標)。海藻活用研究会(生産・品質管理)。ゴーゴーゴー(サプリメントの商品化/2020年12月)
URLhttps://hokkaido-marine.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

かつては真昆布の生育を妨げる海藻として扱われていたガゴメ昆布が、粘りという個性で見直されている点に惹かれました。厄介者と呼ばれた海藻の値打ちを変えたのは、採り方ではなく育て方の研究です。環境条件を整えるだけで、育つ速さも成分の量も変わるという事実に驚きました。

同社が担っているのは、単なる海藻の販売ではなく、研究室の成果を浜の生産につなぐ役目です。栽培の期間が3分の1になれば、海面の使い方も、原料を待つ側の計画も変わります。函館の海という限られた資源を、育てながら使う道筋が見えてきます。

函館で育った海藻が、食卓と洗面台の両方から暮らしに入っていく日を楽しみにしています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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