ナノミストテクノロジーズ「霧化分離」を開発|霧を発生させる水槽とサイクロンのイラスト

ナノミストテクノロジーズ株式会社

ナノミストテクノロジーズ「霧化分離」を開発|研究領域=超音波の霧で・液体を分離/強み=沸騰させず・電気で濃縮/将来性=CO2回収へも・展開を目指す

企業紹介|ナノミストテクノロジーズ株式会社とは?

沸騰させずに、液体を濃縮・分離できる技術「霧化分離」。ナノミストテクノロジーズ株式会社は、その社会実装を目指す、環境・エネルギー系ディープテック企業です。廃水の量を減らす装置「リキッドレデューサー」などの霧化分離装置を、工場や研究の現場へ提供しています。

キーワード「霧化分離」

「霧化分離」(むかぶんり)は、混合した液体に超音波を当てて霧にし、霧の大きさの違いで成分を分ける技術です。特徴は、蒸留と異なり、沸騰させずに液体を濃縮・分離・精製できる点にあります。工場の廃水処理や食品の濃縮では、電気だけで運転する装置として使われます。

市場課題|蒸留は燃料の負担が大きく、熱に弱い液体を扱いにくい

現状の蒸留の課題|現状は、蒸留の加熱で燃料の負担と品質の課題が生じる|蒸留は熱と燃料の・負担が大きい/熱に弱い液体は・処理しにくい

蒸留は熱と燃料の負担が大きい

液体の混合物を分ける蒸留は、液体を加熱して蒸気にし、沸点の差で成分を分ける方法で、多くの製造工程で使われています。熱源に化石燃料を使う場合は、燃料費と二酸化炭素(CO2)の排出が課題です。蒸留を使う工程では、熱源の燃料費とCO2排出の負担が続きます。

熱に弱い液体は処理しにくい

熱に弱い液体や、沸騰しても組成が変わらない液体は、蒸留では扱いにくい対象です。食品のうま味成分や香料は加熱で変質し得るうえ、共沸混合物(沸騰しても液体と蒸気の組成が同じになる混合液)は、沸点の差を使う通常の蒸留では分けにくく、抽出蒸留などの追加の工程を要します。品質を保ちたい食品や高純度の精製では、工程が複雑になります。

他にも、蒸気を発生させるボイラーの設置と維持の負担、高温の装置を置きにくい病院などでの安全面の制約、水分の多い廃水の処理費、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 共沸混合物沸騰させても液体と蒸気の組成が変わらず、沸点も一定のままとなる混合液を指す。沸点の差を利用する通常の蒸留では成分を分けにくいため、抽出蒸留や共沸蒸留といった別の手法で分離する。

ナノミストテクノロジーズの強み|「霧化分離」を開発

ナノミストテクノロジーズが「霧化分離」を開発|現在は、超音波で濃縮・分離する装置を提供|沸騰させず・電気だけで濃縮/熱に弱い液体も・分離できる

沸騰させず電気だけで濃縮

蒸留は液体を沸騰させて蒸気にするため、ボイラーなどの熱源が欠かせません。

同社の「霧化分離」は、混合液に超音波を当てて霧(ミスト)にし、ミストの大きさの違いで成分を分ける方法です。大きいミストはサイクロン(遠心力で粒の大小を分ける装置)で落下して濃縮側に残り、小さいミストは通り抜けて冷却され、液体として回収されます。液体を蒸気にせず細かな粒にするだけなので、蒸発させるより少ないエネルギーで済む仕組みです。使うエネルギーは蒸留より約3〜7割少ないケースが多いといわれ、ボイラーなしで電気だけで動くため、熱源の燃料費と燃焼によるCO2排出を減らせるようになります。

熱に弱い液体も分離できる

熱に弱い食品成分や香料は加熱で品質が落ちやすく、共沸混合物は沸点の差では分けにくい液体です。

霧化分離は、沸点の差ではなく、成分ごとに霧になりやすさとミストの大きさが異なる性質を利用して分けます。そのため共沸混合物でも分離しやすく、沸騰させないので熱に弱い液体も扱えます。例として、シイタケエキスは沸騰させずに20〜30倍へ濃縮でき、うま味成分が壊れにくい点が利点です。廃水は液の粘度によって最大で約100分の1まで減容(量を減らすこと)でき、従来の減容化装置は3〜5分の1が限界とされています。品質を保ったまま濃縮でき、廃水の運搬量も減ります。

FrontJournalの解説
  • サイクロン遠心力を利用して、気流に含まれる粒子を大きさや重さで分ける装置を指す。霧化分離では、気流に乗ったミストのうち大きく重いものを落下させ、小さく軽いものだけを通過させて分ける。

霧化分離の未来|廃水処理から食品、CO2回収への展開を目指す

霧化分離が変える濃縮・分離の未来|廃水・食品の次は、CO2回収を目指す|廃水や食品で・導入済み/量産化とIoT化・を進める/ミストでCO2回収・を目指す

廃水減容や食品濃縮で導入済み

霧化分離装置は、廃水の減容化と食品の濃縮で、すでに導入済みです。廃水減容化装置「リキッドレデューサー」の用途は、加工油と水が混じった廃水から水分を分離して量を減らし、運び出す費用を抑えることです。食品では、熱に弱いシイタケエキスの濃縮に使う専用装置があります。研究用の標準装置は、レンタルで試せます。

装置の量産化とIoT化を進める

次の段階として、同社は霧化分離装置の量産化とIoT化(機器をネットワークにつなぐこと)を進めています。2024年時点では顧客の仕様に合わせた個別受注生産が中心で、製造コストが高い状況です。そこで部品の金型による製造や、電子制御系の基板化を進める計画です。工期の短縮とコストの削減につながる見込みで、超音波振動子(超音波を出す部品)の劣化を遠隔で検出する技術も量産機に組み込み、装置の安定した稼働を目指します。

ミストでのCO2回収を目指す

同社は、ミストでCO2を回収する技術の開発に取り組み、実用化を目指しています。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業で、同社は、石炭火力発電所の排ガスに含まれるCO2を微細ミストに吸収させ、炭酸塩(ソーダ灰)の原料として使う技術のうち、微細ミストによる吸収技術の開発を担当しました。微細ミストは水溶液を粒径5マイクロメートル程度以下の霧にしたもので、CO2と接する表面積が大きく、吸収効率の向上が期待されています。この方式は、CO2回収の低コスト化につながると見込まれています。

会社概要|ナノミストテクノロジーズの事業内容・設立背景

超音波醸造所として創業

ナノミストテクノロジーズ株式会社の前身は、2002年10月に創業した超音波醸造所有限会社で、2011年に現在の社名へ変更しました。創業者で代表取締役社長の松浦一雄氏は、1804年創業の酒蔵・本家松浦酒造の長男です。同氏は、大関株式会社の総合研究所で超音波霧化により成分が分かれる現象を発見し、1995年には超音波霧化による分離技術として報告しました。同社の霧化分離は、土屋教授(当時は徳島大学、現在は同志社大学)との共同研究による技術です。

NEDO・JSTの事業に採択

同社は2020年7月に、双日、トクヤマ徳山製造所とともに、CO2を炭酸塩などへ利用する技術開発のNEDO委託事業に採択され、同年11月には大阪大学、徳島大学とともに、バイオ由来製品の生産をデータで管理する技術の研究開発をNEDOから受託しました。2024年11月には、JST(科学技術振興機構)のA-STEP(研究成果最適展開支援プログラム)実装支援(返済型。開発費を無利子で貸し付ける制度)で、徳島大学の研究成果を用いた普及型装置の開発支援が決定しています。

資本参加と主な取引先

同社には、ベンチャーキャピタル(未上場企業へ出資する投資会社)が資本参加しており、2017年7月に三菱UFJキャピタルが、2018年10月に大阪大学ベンチャーキャピタルが出資しました。主要取引先には、旭化成、双日、常石造船、東京エレクトロンデバイス、オルガノ、トヨタ自動車、本田技研工業、花王などがあります。

会社情報

会社名ナノミストテクノロジーズ株式会社
所在地徳島県鳴門市撫養町木津字西小沖635番地1
設立2002年10月1日(超音波醸造所有限会社として)。2011年に社名変更
代表代表取締役社長 松浦一雄
資本金6,500万円(2025年4月1日現在)
従業員13名
調達三菱UFJキャピタル(2017年7月)。大阪大学ベンチャーキャピタル(2018年10月)
事業霧化分離装置の開発・製造・販売。汚水浄化装置、温泉濃縮装置、VOC(揮発性有機化合物)回収・再生装置の開発・製造・販売。廃水減容化装置「リキッドレデューサー」。研究用装置のレンタル、受託試験
技術領域超音波霧化分離(ミストの大きさの違いで液体を濃縮・分離する技術)
連携双日、トクヤマ徳山製造所(NEDO委託事業)。東京エレクトロンデバイス(霧化分離装置の共同開発・2017年6月〜)。徳島大学
採択NEDO委託事業(2020年7月・双日、トクヤマ徳山製造所と)。NEDO委託事業(2020年11月・大阪大学、徳島大学と)。JST A-STEP 実装支援(返済型)(2024年11月に開発支援決定)。Tomodachi Tohoku Challenge グランプリ(2012年)。徳島ニュービジネス協議会支援大賞(2012年)
URLhttps://www.nanomisttechnologies.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

液体の濃縮と分離は、食品から化学、廃水処理まで、多くの製造業の裏側にある工程です。蒸留では、その熱源に蒸気を使ってきました。霧化分離は、この熱源を電気に置き換え、沸騰させない分離を可能にします。

ナノミストテクノロジーズの特徴は、酒造会社の研究者だった創業者が見いだした超音波霧化の現象を、装置として産業へ展開してきた点です。廃水の減容や食品の濃縮に加え、ミストをCO2の吸収にも利用しようとしています。液体を扱う工程の熱源を、燃料から電気へ移す技術として期待されます。

鳴門から、液体の処理を電気で行う技術が広がる日を期待しています。同じ徳島県の徳島大学発の企業は、株式会社セツロテックで紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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