ジャパンマゴットカンパニー「受粉用ハエ」を開発|ハウスの中でハエがイチゴの花にとまるイラスト

株式会社JAPAN MAGGOT COMPANY(ジャパンマゴットカンパニー)

ジャパンマゴットカンパニー「受粉用ハエ」を開発|研究領域=花粉を運ぶ・受粉用ハエ/強み=国内で飼育し・サナギで供給/将来性=作物を広げて・受粉を支える

企業紹介|株式会社JAPAN MAGGOT COMPANYとは?

イチゴやマンゴーの施設栽培で、曇りや低温の日にも花粉を運ぶ技術として、注目を集める「受粉用ハエ」。株式会社JAPAN MAGGOT COMPANYは、その普及に取り組む、岡山大学発のバイオ系ディープテック企業です。受粉用ハエ「ビーフライ」を、イチゴやマンゴーの農家、試験場、種苗会社へ提供しています。

キーワード「受粉用ハエ」

「受粉用ハエ」は、花の蜜を求めて花を訪れる性質を利用し、ミツバチの代わりや補助として花粉を運ばせる、ヒロズキンバエ(金緑色のキンバエ)です。特徴は、サナギの状態で届き、曇りや低温の時期にも働ける点にあります。施設栽培の現場で、サナギの容器をハウスに置き、低温期は加温装置で羽化させる形で、花粉を運ぶハエを用意できます。

市場課題|ミツバチの不足と天候で、施設栽培の受粉が不安定になる

現状の受粉の課題|現状は、供給不足と天候で受粉が不安定|ミツバチの不足で・受粉が不安定/ミツバチは・天候に左右される

ミツバチの不足で受粉が不安定

施設栽培では受粉にミツバチを使う場面が多く、その不足が生産の不安定につながっています。ミツバチは、ネオニコチノイド系(殺虫剤の一種)の農薬の使用によるとされる大量死や、オーストラリアでのノゼマ病(ミツバチの病気)の流行による輸入停止などで不足します。不足が続けば、生産コストの増大と品質の低下は避けにくい状況です。

ミツバチは天候に左右される

ミツバチは、雨天や曇天では活動せず、冬の低温や日照の少ない時期も飛びにくい昆虫です。花が咲いていても受粉が進まない日が生じ、収穫の時期や品質への影響が懸念されます。天候とは別に、小さなハウスでは花の数に対してミツバチが多く、花を過剰に訪れて奇形果が出る場合もあります。

他にも、ミツバチの価格高騰、雨天や曇天で活動しにくいこと、花数の不足による奇形果、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 奇形果受精が不十分なために、形が整わなくなった果実を指す。イチゴでは、雌しべに花粉が十分につかない場合や、訪花昆虫が花に過剰に訪れる場合に生じる。見た目の品質が下がり、出荷できる量が減る要因になる。

ジャパンマゴットカンパニーの強み|「受粉用ハエ」を開発

ジャパンマゴットカンパニーが「受粉用ハエ」を開発|現在は、飼育したハエで受粉の代替を提供|医療用の技術で・国内生産/雨天や曇天でも・花を傷つけにくい

医療用の技術で国内生産

従来の受粉用ミツバチは、巣箱を施設に置いて使いますが、病気や農薬の影響で供給が不安定になっていました。

同社は、医療用の無菌マゴット(ハエの幼虫)を増やす技術を応用し、受粉用のヒロズキンバエを国内で飼育しています。同社はハエを、卵から幼虫、サナギまで管理された環境で育て、サナギの状態で専用容器に入れて出荷します。治療用のマゴットとは、完全に分けた環境での管理です。全世界の温帯・亜熱帯に広く分布し、日本でも全国に生息するハエです。農家は、ミツバチの供給に左右されにくく、開花の時期に合わせて受粉に使うハエを確保できます。

雨天や曇天でも花を傷つけにくい

従来のミツバチは、15〜25℃で活動し、活動に紫外線も必要とするうえ、雨天や曇天では活動しません。

ビーフライに使うヒロズキンバエは、10〜35℃と幅広い温度で活動し、紫外線がなくても雨天や曇天の日に花を訪れます。花の蜜だけを餌にする軽量なハエで、花を傷つけにくく、イチゴでは奇形果の発生を低減できます。毒針がなく、人を刺さないため、作業する人や観光農園の来園者が刺される心配はありません。サナギの状態で届くため、開花の状況に合わせて必要な時期に入れられ、農家は曇りの日にもハエに受粉を任せることができます。

FrontJournalの解説
  • マゴットハエの幼虫を指し、一般にウジと呼ばれる。ヒロズキンバエのマゴットは壊死した組織だけを除く性質があり、傷の治療に使われる。無菌の環境で育てると、感染の原因になりにくい。

受粉用ハエの未来|イチゴやマンゴーから種苗や野菜へ

雨天や曇天でも働く受粉用ハエが変える未来|イチゴやマンゴーから種苗や野菜へ|イチゴとマンゴーで・実用化済み/ミツバチと併用し・冬の受粉を補う/作物と種苗への・拡大を目指す

イチゴとマンゴーで実用化済み

ビーフライは、イチゴやマンゴーなどの施設栽培の受粉に、すでに使われている製品です。ビーフライの導入先は、2023年度時点で全国45都道府県に及びます。イチゴでは、奈良県などの試験により、奇形果の発生を減らす効果が確かめられています。マンゴーでは、岡山県瀬戸内市の農園で、2010年1月からハエの供給が始まりました。

ミツバチと併用し冬の受粉を補う

イチゴでは、ミツバチと併用して受粉を補う使い方で、ビーフライの利用拡大が期待されています。併用する場合、1回あたりのサナギの導入は1a(100㎡)あたり150匹で、単独利用の300匹の半分です。低温期は羽化に時間を要するため、加温パネルでサナギを温める羽化促進装置を使うと、低温期でも羽化させやすくなります。成虫の寿命は2週間程度で、1回の導入で受粉の効果が続くのは1〜2週間のため、7〜10日ごとに新しいサナギを導入します。

作物と種苗への拡大を目指す

同社が目指すのは、ビーフライの利用先を、イチゴやマンゴーから、ほかの施設栽培の果実や野菜、種苗(種子や苗)の採取へ広げることです。ハチやほかの昆虫、手作業の人工受粉で行ってきた受粉にも、対応できる可能性があります。共同試験を呼びかけているのは、作物ごとに受粉の効果が異なり、適した作物を確かめる必要があるためです。実現すれば、受粉の手段を選べる作物が増え、果実や野菜の安定した生産につながります。

会社概要|ジャパンマゴットカンパニーの事業内容・設立背景

岡山大学医学部発で創業

株式会社JAPAN MAGGOT COMPANYの設立は、2005年4月です。岡山大学医学部発のベンチャー企業で、医療用の無菌マゴットを製造・販売する事業から始まりました。2006年7月には受粉用のハエを種苗会社へ試験的に供給し、2009年9月にミツバチの代替としての受粉研究を始めました。2010年5月には、受粉用のハエを「ビーフライ」と名付けています。

研究機関との連携

同社は、奈良県、岡山大学、島根県、農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)西日本農業研究センターとコンソーシアム(複数の機関による共同の研究体)を組み、ビーフライをイチゴで安定して利用するための研究・技術開発を行ってきました。この研究の成果は、農研機構などが公開している「ビーフライ利用マニュアル」にまとめられています。岡山大学の研究者らとは、イチゴなどでの受粉効果を調べた論文も、園芸学の学術誌に発表しています。

医療用と農業用の事業

同社の主な事業は、医療用の無菌マゴットの製造・販売と、受粉用ビーフライの研究・開発・販売等です。医療用では、病院や診療所と連携し、マゴットセラピー(ハエの幼虫を使う傷の治療法)用の無菌マゴットを提供しています。農業用では、ビーフライをサナギの状態で専用容器に入れて農家へ届け、注文をメールのフォームから受け付けています。

会社情報

会社名株式会社JAPAN MAGGOT COMPANY(ジャパンマゴットカンパニー)
所在地岡山県岡山市北区岡町3番14号
設立2005年4月1日
代表代表取締役 佐藤卓也
事業医療用の無菌マゴットの製造・販売。受粉用ヒロズキンバエ「ビーフライ」の研究・開発・販売
技術領域医療用の無菌マゴットを育てる技術を応用した、受粉用ヒロズキンバエの飼育
連携岡山大学。奈良県。島根県。農研機構西日本農業研究センター
採択生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」の研究課題(支援を受けた共同研究体の一員)
URLhttps://maggot.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

傷の治療に使う無菌のマゴットを育てる技術が、農業の受粉に生かされる。ジャパンマゴットカンパニーの歩みは、医療で磨いた技術が別の産業の困りごとを解く例として、興味深いものです。ハエを、管理された環境で育てて届ける農業の資材として扱う点にも、新しさを感じました。

ミツバチの不足や天候という課題に、ハエという別の担い手を用意した発想は、施設栽培の選択肢を広げます。ミツバチと使い分ける使い方も含め、農家が状況に合わせて選べることに価値があると思います。選べる余地の広さが、安定した生産を支える土台です。

花を訪れる小さなハエが、イチゴやマンゴーの実りを支える。その光景が全国の施設栽培で当たり前になる日を、楽しみに待ちたいと思います。岡山大学から生まれたほかの企業は、岡山大学発スタートアップ10選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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