Space Power Technologies「マイクロ波ワイヤレス給電」を開発|電波を出すアンテナ板と、電波を受ける小さな受電板のイラスト

株式会社Space Power Technologies(スペースパワーテクノロジーズ)

Space Power Technologies「マイクロ波ワイヤレス給電」を開発|研究領域=電波で離れた・機器へ給電/強み=5.7GHz帯で・数W級を給電/将来性=宇宙とスマホへ・展開を目指す

企業紹介|株式会社Space Power Technologiesとは?

センサーなどの機器へ、離れた場所から電力を届ける技術として、注目を集める「マイクロ波ワイヤレス給電」。株式会社Space Power Technologiesは、その社会実装を目指す、京都大学発のエレクトロニクス系ディープテック企業です。5.7GHz帯のマイクロ波で電力を送る給電システム「Power Gate」を、工場や物流倉庫の現場向けに開発しています。

キーワード「マイクロ波ワイヤレス給電」

「マイクロ波ワイヤレス給電」は、送電器から出したマイクロ波(電波の一種)を受電器で電気に変え、離れた機器へ電力を送る方式です。特徴は、電磁誘導方式と異なり、機器を近づけなくても給電できる点にあります。配線が難しい工場の設備や、倉庫の棚の表示器などで、配線や電池交換の手間を省くことが期待されています。

市場課題|IoT機器の増加で広がる、電源確保の負担

現状の電源確保の課題|現状は、配線と電池の保守で現場の負担が増加|センサーの配線と・電池交換が負担/既存方式は・距離か電力に制約

センサーの配線と電池交換が負担

IoT機器(インターネットにつながる機器)が増え、センサーなどへの電力供給が課題です。電源ケーブルの敷設には工事が要り、電池式では交換や充電の作業が欠かせず、稼働停止や人件費も生じます。センサーが増えるほど、配線工事と保守の負担は大きくなります。

既存方式は距離か電力に制約

電磁誘導方式は、伝送距離が短く、機器の位置がずれると給電効率が落ちます。空間を伝送する方式のうち、920MHz帯(電波の周波数帯の1つ)は、給電できる電力が小さく、省電力のセンサーなどが対象です。そのため、高出力で頻繁な電池交換が要る用途は、置き換えにくい状況です。

他にも、配線できない加工位置の近くへのセンサーの設置、ロボットや搬送装置のケーブルによる動作の制限、電池切れによるセンサーの測定の中断、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 電磁誘導方式送電側と受電側のコイルの間に生じる磁界を利用して電力を送る方式を指す。距離が近いほど効率が高く、位置がずれると効率が低下する。スマートフォンの充電台などに使われる。

Space Power Technologiesの強み|「マイクロ波ワイヤレス給電」を開発

Space Power Technologiesが「マイクロ波ワイヤレス給電」を開発|これまでに、電波で数ワット級の送電を実現|配線なしで・離れた機器へ給電/5.7GHz帯で・数W級を給電

配線なしで離れた機器へ給電

従来のセンサーは、電源ケーブルでの配線か電池の搭載が中心で、設置場所が給電方法に制約されます。

同社の「Power Gate」は、送電器から5.7GHz帯のマイクロ波を放ち、受電器が受け取って電気に変える給電システムです。受電器にはレクテナ(電波を直流の電力に変換する装置)を使い、受け取った電波を電力として機器へ渡します。電波は空間を伝わるため、送電器と受電器を電源ケーブルでつなぐ必要がありません。そのため、センサーなどの設置場所が配線工事に縛られなくなり、給電を受けるセンサーは、電池交換や充電の手間を減らせるようになります。

5.7GHz帯で数W級を給電

従来の送電アンテナは、素子(電波を出す小さな部品)を複数使うため回路の数が増え、コストが上がりやすくなります。

同社の5.7GHz帯の給電システムは、1メートルの距離で数ワット級の電力を送れます。5.7GHz帯は、制度上の送信出力の上限が32Wで、920MHz帯の1Wより大きい帯域です。同社は、従来は4素子で得ていた送信アンテナの特性を1素子で実現し、回路の数を減らして送電装置の部品とコストを抑えています。受電側のレクテナは、マイクロ波の強さによりますが、変換効率が70%以上です。数ワット級の電力を送れるため、頻繁な電池交換や充電が要る用途にも、無線で給電できる範囲が広がります。

FrontJournalの解説
  • レクテナ受信したマイクロ波などの電波を直流の電力に変換する装置を指す。アンテナと整流回路を組み合わせた構造で、変換効率が給電システム全体の性能を左右する。

マイクロ波ワイヤレス給電の未来|工場や物流から宇宙・携帯機器へ

マイクロ波ワイヤレス給電が変える現場の未来|物流から宇宙まで、展開を目指す|物流向けに・試作品を納入/製造現場の・センサー給電を検討/宇宙とスマホへの・給電を目指す

物流向けに試作品を納入

物流向けには、倉庫内作業の効率化に使うワイヤレス給電システムの試作品を納入済みです。デジタルピッキング(棚の表示器が作業者へ出荷を指示する仕組み)は、表示器が多く配線が難しく、電池式では数百個単位の電池交換が要る分野です。電気通信大学発のB-STORMとは、この用途向けの給電システムを共同開発しています。同社は、人が業務をしない時間帯に表示器へ給電する運用を想定しています。

製造現場のセンサー給電を検討

製造現場では、工作機械の加工位置付近に付けるセンサーへの給電を、同社が想定しています。この位置は配線が難しく、電池では長期の電力供給が難しいため、刃物の破損を前もって知り、故障を防ぐ保守に使える可能性があります。電池切れによる測定の中断も避けやすい点が利点です。実現すれば、センサーを置く位置が配線の都合に縛られません。

宇宙とスマホへの給電を目指す

同社は、5.7GHz帯に続き24GHz帯の送電にも取り組み、月面探査とスマートフォンなどへの給電を目指しています。24GHz帯は、5.7GHz帯より波長が短く、細いビームに絞りやすい帯域です。JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙探査イノベーションハブの共同研究に参画し、24GHz帯の高効率な大電力伝送システムの開発に取り組んでいます。実現すれば、地上の携帯機器から月面探査まで、電源ケーブルに縛られない使い方が広がります。

会社概要|Space Power Technologiesの事業内容・設立背景

京都大学の教授を顧問に創業

株式会社Space Power Technologiesは、2019年5月に設立された京都大学発のスタートアップです。代表取締役の古川実氏は、無線通信機器メーカーでワイヤレス電力伝送装置の商品開発に携わりました。開発の継続が厳しくなったことが、退職と起業の出発点です。その後、埼玉大学大学院で研究を再開し、京都大学の篠原真毅教授(生存圏研究所)を科学顧問に迎えました。京都大学イノベーションキャピタルのハンズオン出資(経営支援を伴う出資)を得て、創業しました。

採択と展示会の出展歴

国の研究開発事業への採択と、展示会への出展が続いています。2021年度には総務省の「戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)」に採択され、24GHz帯の空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの研究開発に取り組みました。2023年11月と2024年12月に始まった、JAXA宇宙探査イノベーションハブの共同研究2件に参画しました。2023年は「EY Innovative Startup 2023」の受賞企業です。2025年には、5月の大阪・関西万博と11月のIIFES2025(展示会)で、5.7GHz帯の給電を実演しています。

事業会社とVCが出資

出資元は、事業会社とベンチャーキャピタルの両方です。2022年3月には豊田合成が出資しました。豊田合成は、車室内の快適性の向上などを視野に、早期の実用化に向けた開発を加速するとしています。このほか、Makers Boot Campが運営する「MBC Shisaku 1号投資事業有限責任組合」からも出資を受けています。

会社情報

会社名株式会社Space Power Technologies
所在地京都府京都市西京区御陵大原1番36号 京大桂ベンチャープラザ北館
設立2019年5月
代表代表取締役 古川実。科学顧問は篠原真毅(京都大学 生存圏研究所 教授)
調達京都大学イノベーションキャピタル。豊田合成(2022年3月)。MBC Shisaku 1号投資事業有限責任組合
事業空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの開発・製造・販売、研究開発受託。製品名は「Power Gate」
技術領域マイクロ波ワイヤレス給電(5.7GHz帯・24GHz帯)
連携B-STORM(デジタルピッキング向け給電システムの共同開発)。JAXA宇宙探査イノベーションハブ(2023年11月と2024年12月に始まった共同研究2件に参画)
採択総務省 SCOPE(2021年度)。京都市ベンチャー企業目利き委員会(2022年3月認定)。EY Innovative Startup 2023

編集後記|FrontJournal編集部より

センサーが増えるほど、電源の確保は現場の負担になります。配線と電池交換は、設置数が増えるほど手間が増える作業です。電波で離れた機器へ電力を届ける空間伝送型の給電は、その負担を減らす手段の1つです。

Space Power Technologiesが示すのは、5.7GHz帯で1メートルの距離に数ワット級の電力を送れる点と、24GHz帯の送電にも取り組む姿勢です。電池交換の手間を減らすだけでなく、機器の置き場所を配線の制約から切り離す技術といえます。月面探査や携帯機器まで、用途を広げようとしている点も特徴です。

京都大学発のスタートアップが開発する技術が、工場や倉庫から月面まで、電源ケーブルに縛られない機器の使い方を広げる日を期待しています。京都大学から生まれたほかの企業は、京都大学発スタートアップ10選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。