2026.09.21 東京工科大学ら 元発表:2026.09.16

東京工科大学ら、BAP1変異の中皮腫に選択的な化合物の活性体を特定

ニュース紹介

「中皮腫に選択的に作用する化合物と光学異性体を特定 〜BAP1変異がん細胞を標的とする新たな治療薬開発に期待〜」

東京工科大学応用生物学部の村上優子教授らの研究グループは、日本大学文理学部の早川一郎教授、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の佐藤綾人特任准教授らとの共同研究により、悪性中皮腫原因遺伝子の一つであるBAP1の変異を持つがん細胞に選択的に作用する低分子化合物を見出し、その活性を担う光学異性体を特定したと発表しました。名古屋大学が保有する化合物ライブラリーのスクリーニングから、化合物Z250-1659を見出しました。S体R体をそれぞれ合成して比較した結果、S体がBAP1変異細胞に強い増殖抑制活性を示し、R体の活性は著しく弱いことが明らかになりました。成果は2026年8月26日に国際学術誌Bioorganic & Medicinal Chemistryのオンライン版に掲載されています。

出典:東京工科大学、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 2026年9月16日 プレスリリース/掲載誌:Bioorganic & Medicinal Chemistry
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2026/09/-bap1.html

FrontJournalの解説

合成致死でがん細胞だけを狙う

悪性中皮腫は治療が難しいがんの一つで、主な原因としてアスベストへの曝露が知られています。原因遺伝子のほとんどはがん抑制遺伝子で、その遺伝子異常を利用してがん細胞を選択的に攻撃する治療法の開発が期待されています。研究グループは、がん細胞に特有の遺伝子異常に依存した弱点を標的にする合成致死に着目し、BAP1の機能喪失を利用した治療法の開発を進めています。

①化合物ライブラリーから候補を発見

研究グループは、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所が保有する化合物ライブラリースクリーニングしました。その結果、BAP1変異を持つ悪性中皮腫細胞に選択的な増殖抑制活性を示す低分子化合物として、Z250-1659を見出しました。この化合物には、分子の立体構造が鏡像関係にあるS体とR体の光学異性体が存在します。

②活性を担うのはS体

S体とR体をそれぞれ合成し、BAP1変異を持つ悪性中皮腫細胞への作用を比較しました。S体は強い増殖抑制活性を示し、R体の活性は著しく弱いことが明らかになりました。BAP1を再導入した細胞ではS体に対する感受性が低下したことから、S体の作用がBAP1の状態と関連していることも示されました。

編集部からひとこと

今回の成果は細胞を使った研究の段階で、治療薬としての開発時期には言及していません。今後は、この化合物がBAP1変異細胞の増殖を抑える詳細な分子機構標的分子を明らかにし、より有効な化合物の開発を進めるとしています。活性を担う光学異性体が特定された点は、創薬の次の段階に進む足がかりとして注目されます。詳細は東京工科大学の公式発表をご参照ください。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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