2026.10.01 │ 理化学研究所・京都大学 │ 元発表:2026.09.29

理研・京大、卵黄不使用のラット精子凍結保存液を開発、産仔作出に成功

ニュース紹介

「微生物汚染リスクの低いラット精子凍結保存液を開発 -凍結融解精子から体外受精で産仔作出に成功-」

京都大学と理化学研究所(バイオリソース研究センター)の研究グループは、卵黄などを含まず、化学的組成が明らかなラット精子用の凍結保存液を開発しました。この保存液で凍結した精子を融解して体外受精を行い、産仔の作出に成功したとしています。研究には守田昂太郎氏(研究当時は京都大学、現在は理研バイオリソース研究センター研究員)、浅野雅秀氏、持田慶司氏、小倉淳郎氏、井上貴美子氏が参加しています。

出典:理化学研究所 2026年9月29日 プレスリリース(掲載誌:Biology of Reproduction/DOI: 10.1093/biolre/ioag200)
https://www.riken.jp/press/2026/20260925_4/index.html

FrontJournalの解説

ラット精子の凍結保存とは

ラットは、薬の安全性試験や神経科学、疾患モデルの研究などで広く使われる実験動物です。遺伝子改変などで作られた系統は研究資産であり、これを精子や胚の凍結保存で残しておくと、飼育を続ける負担を減らせるほか、系統が途絶える事故への備えにもなります。

ただし、ラットの精子は凍結に向いていないことが知られています。熊本大学の2020年の発表によれば、ラット精子は他の動物種より大きく、pH・浸透圧・温度の変化でダメージを受けやすく、凍結融解後の運動性が低下しやすいとされています。今回の研究は、この課題に対して保存液の組成の側から取り組んだものです。

①卵黄を使わず、組成が明らかな保存液にした点

精子の凍結保存液には、動物の細胞を凍結から守る目的で卵黄が使われることがあります。卵黄は天然由来の成分であるため、一般に微生物汚染の懸念や、製造ロットごとの成分のばらつきが課題になります。今回の保存液は卵黄などを含まず、化学的組成が明らかな点が特徴として示されています。

成分がすべて分かっている保存液は、研究室や施設が違っても同じ条件を再現しやすく、微生物混入の経路も限定しやすくなります。バイオリソースを扱う施設にとっては、品質管理の面で意味を持つ設計といえます。

②凍結融解した精子から産仔が得られたことの意味

精子の凍結保存液の評価では、融解後の運動性だけでなく、実際に受精して個体が生まれるかどうかが最終的な確認になります。研究グループは、凍結融解した精子を用いた体外受精から産仔を作出できたと報告しており、保存した精子が次世代を作る能力を保っていたことを示しています。

なお、受精率や産仔率などの具体的な数値は、FrontJournalが確認できた範囲の原文には記載がありません。詳しい条件や結果は、掲載論文でご確認ください。

編集部からひとこと

今回の成果は、実験動物の遺伝資源を保存するための基盤技術の研究にあたります。発表内容に、特定の製品化や実用化の時期への言及はありません。卵黄などの動物由来成分に頼らない保存液が整えば、バイオリソースの保存や系統の維持を支える技術として、今後参照される可能性があります。詳細はプレスリリースとBiology of Reproductionの掲載論文をご参照ください。

FrontJournal編集部

プレスリリース原文を読む

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら