AFIテクノロジー「微生物迅速検査」を研究|電極で生きた菌だけを捕らえる検査装置を描いたイラスト

株式会社AFIテクノロジー(エーエフアイテクノロジー)

AFIテクノロジー「微生物迅速検査」を研究|研究領域=培養せずに・生菌数を測る/強み=生菌だけを・電極で捕らえる/将来性=細胞の分離や・がん個別化医療へ

企業紹介|株式会社AFIテクノロジーとは?

工場の微生物汚染を、早く見つける技術「微生物迅速検査」。株式会社AFIテクノロジーは、その社会実装を目指す、京都大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。生菌数を測る検査装置「ELESTA PixeeMo」(エレスタ ピクシーモ)を、食品・飲料などの品質管理の現場へ提供しています。

キーワード「微生物迅速検査」

「微生物迅速検査」は、培養して菌を増やす工程を待たずに、試料に含まれる生きた菌の数を測る検査の方法です。従来の検査法との違いは、培養に要する24〜48時間を待たずに結果が出る点です。食品や飲料、医薬品の製造の現場で、異常が分かった時点で製造の担当者へ早く伝えられます。

市場課題|工場の微生物検査は、結果が出るまでに時間がかかり測れる対象も限られる

現状の微生物検査の課題|現状は、培養に時間がかかり汚染の判明が遅れる|衛生管理の義務化で・検査の負担増/培養で増えない菌は・測りにくい

衛生管理の義務化で検査の負担増

衛生管理の義務化により、検査の負担が増えているといわれています。2021年6月の改正食品衛生法の完全施行で、原則すべての食品等事業者にHACCP(工程ごとに危害を管理する衛生管理の手法)に沿った衛生管理が必須です。一方で培養法は、異常が分かるまでに24〜48時間かかります。

培養で増えない菌は測りにくい

従来の検査法には、測りにくい微生物が残ります。培養法は、寒天培地で35℃・48時間で増えたコロニー(培地上の菌の集まり)を数えるため、その条件で増えない微生物には気づきにくいとされます。ATP(細胞のエネルギー物質)を酵素と反応させた発光量や蛍光染色による迅速法にも、菌種による発光量の差や、ろ過できない試料への対応が課題です。

他にも、手技による汚染と製品の汚染の切り分け、自家蛍光(試料自身が発する蛍光)の粒子と染まった菌の判別、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 培養法試料の微生物を寒天培地などで増やし、目に見えるコロニーの数から生菌数を求める検査法である。菌が増えるまでの時間が必要で、培地の条件に合わない微生物は数に表れない。

AFIテクノロジーの強み|「微生物迅速検査」を開発

AFIテクノロジーが「微生物迅速検査」を開発|今後は、電極で生菌を数えることが可能に|培養を待たず・1時間以内に検知/菌種を問わず・1個ずつ数える

培養を待たず1時間以内に検知

試料の菌を培地で増やしてから数える方式では、増殖に要する時間がそのまま検査時間になります。

同社の「AMATAR」(アマタ)は、誘電泳動(電界の強さにムラがある空間で、分極した粒子が動く現象)によって生きた菌だけを電極に捕らえる分離技術です。電極を櫛の歯の形にすると電界の強さにムラが生じ、菌の中の電解質が分極(正負の電気が電界に応じて逆向きに偏ること)して、電極へ引き寄せられる力を受けます。細胞膜が壊れた死菌は電解質が漏れているため、この力が弱く、試料の流れに乗って流れ去るのが、生菌との違いです。サンプリング後1時間以内に異常を検知できるため、製造の現場での対応が早まります。

菌種を問わず1個ずつ数える

発光量や蛍光染色に基づく方法は、試料をメンブレンフィルター(微細な孔の膜)でろ過できるかどうかに左右されます。

「ELESTA PixeeMo」は、ろ過の前処理を省き、電極の上に捕らえた菌を1個ずつ数える装置です。菌種によらず測定でき、細菌と真菌はそれぞれ分けて数えられます。膜の孔径に左右されないため、直径0.1μm極小細菌も検出の対象です。粘性の高い試料も測定でき、非侵襲・非破壊(菌を傷つけない)の原理のため、捕らえた微生物を生きたまま回収でき、必要なときは培養して調べられます。ろ過できない試料でも前培養を挟まず測定できるため、検査の待ち時間を抑えられます。

FrontJournalの解説
  • 誘電泳動電界の強さにムラがある空間で、粒子自身が分極し、その力の差で動く現象を指す。粒子の電気的な性質で働く力が変わるため、生きた菌と死んだ菌を分けられる。

微生物迅速検査の未来|検査から細胞の選別へ、応用が広がる

微生物迅速検査が変える未来|検査から細胞の選別へ、応用が広がる|AI画像解析で・菌を自動計数/細胞分離を・再生医療へ/がん個別化医療の・実現を目指す

AI画像解析で菌を自動計数

新型装置「PixeeMo-nX」は、菌の計数にAI画像解析を取り入れています。2026年4月に、全方位型微生物迅速検査システムとして販売を始めました。CEマーキング(安全基準への適合を示す表示)を取得し、米国の認証機関ULの試験にも合格しています。ディープラーニング(多層の学習モデルによる機械学習)を用いた画像解析で菌を識別し、自動でカウントするため、製薬や食品・飲料の品質管理で、計数の手間を減らせます。

細胞分離を再生医療へ広げる

分離技術の用途は、微生物の検査から細胞の選別へ広がっています。SCREENホールディングス(2022年から親会社)と共同開発した「ELESTA CROSSORTER」は、多様な粒子から目的の細胞をラベルフリー(蛍光色素や抗体の目印を付けない方式)で分離する装置です。マイクロ流路で細胞の流れを制御するサイズ分離と、交流電圧への反応の違いを使う電気的特性分離を、専用チップにまとめました。流路を単回使用にして洗浄を省き、異物混入を抑え、再生医療への応用展開を図ります。

がん個別化医療の実現を目指す

がん個別化医療の実現を目指しています。2022年11月に、京都大学、SCREENホールディングス、京ダイアグノスティクスと共同研究を始めました。京都大学医学研究科には、産学共同講座「がん個別化医療開発講座」が設置されています。細胞分離の研究は、2014年に京都大学と始めた血中循環腫瘍細胞(血液中を流れるがん細胞)の分離にさかのぼります。

会社概要|株式会社AFIテクノロジーの事業内容・設立背景

2013年に設立し京都へ移転

株式会社AFIテクノロジーは、2013年5月に設立されました。設立時の本社は大阪市で、2015年2月に神戸市、2016年5月に京都市へ移りました。現在の本社は、京都大学医学研究科メディカルイノベーションセンター2階です。事業内容は、細胞や微生物の評価・制御・製造に関わる装置や試薬の開発・製造・販売です。代表取締役社長は円城寺隆治氏で、2025年4月に再就任しました。

採択・連携

同社は、国の採択と大学・企業との連携を重ねています。2014年7月に経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業へ採択され、京都大学と血中循環腫瘍細胞の分離の研究を始めています。2017年12月から経済産業省の「地域未来牽引企業」、2020年10月に「J-Startup KANSAI企業」に選ばれました。2020年1月には「ELESTA PixeeMo」が飲料水を対象にAOAC-PTM認証(試験法の性能を第三者が認証する制度)を取得しています。2024年度に、三浦工業との共同研究の論文が日本防菌防黴学会の論文賞を受けました。

調達を経てSCREEN傘下へ

同社は、出資と資本業務提携資金調達を進めてきました。2015年11月〜2016年6月のシリーズA(創業初期の出資)では、京都大学イノベーションキャピタルなどから3.1億円を調達しています。続くシリーズBでは約5.6億円を調達し、SCREENホールディングス、極東製薬工業などと資本業務提携を結びました。2022年には、第三者割当増資(特定の相手だけに新株を発行する方法)によってSCREENホールディングスの子会社となりました。

会社情報

会社名株式会社AFIテクノロジー(AFI Corporation)
所在地〒606-8397 京都市左京区聖護院川原町53 京都大学医学研究科メディカルイノベーションセンター2階。大阪事業所:大阪市淀川区西中島3-3-4 SPビル7階
設立2013年5月21日
代表代表取締役社長:円城寺 隆治(2025年4月再就任)
資本金資本金および資本剰余金 2億8,933万円(うち資本金9,900万円)
調達シリーズA 3.1億円(京都大学イノベーションキャピタルほか/2015年11月〜2016年6月)。シリーズB 約5.6億円。2022年にSCREENホールディングスの子会社化(第三者割当増資)
事業細胞、微生物等の評価・制御・製造に関わるデバイス、装置、試薬等の開発、製造および販売。主な製品は「ELESTA PixeeMo」「PixeeMo-nX」「ELESTA CROSSORTER」
技術領域誘電泳動を用いた微粒子分離技術「AMATAR」による微生物迅速検査と細胞分離
連携SCREENホールディングス(「ELESTA CROSSORTER」の共同開発)。京都大学・SCREENホールディングス・京ダイアグノスティクス(がん個別化医療/2022年11月)。三浦工業(レジオネラ属菌の迅速検出法)
採択経済産業省 戦略的基盤技術高度化支援事業(2014年7月)。経済産業省「地域未来牽引企業」(2017年12月〜)。AOAC-PTM認証 PTM 012002(飲料水/2020年1月)。J-Startup KANSAI企業(2020年10月)。日本防菌防黴学会 令和6年度論文賞
URLhttps://www.afi.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

生きているか死んでいるかを、電気の応答の違いで分ける。この着眼の素直さに感心しました。網目でこし取るのではなく、電界のゆがみで生菌だけを引き寄せる発想が、待ち時間そのものを短くしています。

面白いのは、同じ分離の原理が、微生物の計数から細胞の選別へそのまま伸びている点です。単なる検査装置の会社ではなく、粒子を分ける技術の会社だと受け取ると、がん個別化医療までつながる広がりが見えてきます。電気の力で粒子を選り分けるという一本の軸が、食品工場から医療の現場までを結んでいます。

菌を数える技術が、患者一人ひとりの治療にまで届く日を楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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