2026.10.28 │ 科学技術振興機構(JST) │ 元発表:2026.10.27

東京大学ら、アト秒X線レーザーの生成に成功

ニュース紹介

「アト秒X線レーザーの生成に成功~電子の超高速な動きを捉える新たな光を実現~」

東京大学大学院新領域創成科学研究科の井上伊知郎特任准教授(兼:理化学研究所放射光科学研究センターユニットリーダー/JSTさきがけ研究員)、大阪大学大学院工学研究科の山田純平准教授、理化学研究所放射光科学研究センターの矢橋牧名センター長らによる国際共同研究グループは、アト秒X線レーザーの生成とその時間幅の精密測定に成功しました。

時間幅が1フェムト秒(1フェムト秒=10-15秒)以下の電子パルスをアンジュレータと呼ばれる周期的な磁石列に通すことで、極めて短い時間幅を持つX線レーザーを生成しました。このX線レーザーを物質に照射した際に生じる特殊な蛍光の強度を測定して理論計算と比較し、ほぼすべての生成されたX線レーザーの時間幅が100〜400アト秒(1アト秒=10-18秒)程度であることを明らかにしました。アト秒X線レーザーの実現を示す初めての成果です。本研究成果は2026年10月20日(英国時間)付で、英国科学誌「Nature Photonics」に掲載されました(DOI:10.1038/s41566-026-02026-7)。

出典:東京大学・大阪大学・理化学研究所・科学技術振興機構(JST) 2026年10月27日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20261027/index.html

FrontJournalの解説

アト秒とは何か

今回のテーマは「アト秒」(1兆分の1秒の100万分の1、10-18秒)という極めて短い時間で光を放つX線レーザーです。プレスリリースによると、原子や分子の内部で起こる電子の運動の多くは、アト秒からフェムト秒の時間スケールで進みます。

こうした運動を直接観測することは長年の研究課題とされてきました。今回、X線領域のアト秒レーザーが初めて実現したことになります。

①X線自由電子レーザーで短波長側の限界を超えた

研究グループは「X線自由電子レーザー」(加速した電子から高強度のX線レーザーを作る装置)を使いました。1フェムト秒以下の電子パルスをアンジュレータ(周期的な磁石列)に通す方法で、従来のアト秒パルス生成における短波長側の限界を突破したと説明されています。

東京大学の解説記事(高強度レーザーとアト秒科学)によると、従来のアト秒光パルスは軟X線領域の波長でした。今回の成果で、より波長の短いX線の領域に広がったことになります。

②時間幅は100〜400アト秒と確認

時間幅の確認には、X線を物質に当てたときに生じる特殊な蛍光の強度を使いました。測定結果を理論計算と比べ、ほぼすべてのレーザーが100〜400アト秒程度だったとしています。

期待される使い道は、化学反応の初期段階で起こる高速な電子の動きを捉えることです。物質科学や生物学を含む幅広い分野での活用が見込まれています。

編集部からひとこと

電子の動きは速すぎて、これまで直接は見られませんでした。X線領域のアト秒レーザーは、その動きを捉えるための新しい道具になります。実際に反応の観測へ使われる段階に進むかが、今後の注目点です。

FrontJournal編集部

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