能登アクアファーム「エビの陸上養殖」を研究

能登アクアファーム株式会社

能登アクアファーム「エビの陸上養殖」を研究

企業紹介|能登アクアファーム株式会社とは?

能登の海洋深層水を使い、バナメイエビを陸上の水槽で育てる「エビの陸上養殖」。能登アクアファーム株式会社は、その社会実装を目指す、金沢大学発の水産系ディープテック企業です。同社は、バナメイエビの稚エビを海洋深層水で生産し、国内の養殖業者へ引き渡す計画です。

キーワード「エビの陸上養殖」

「エビの陸上養殖」は、海ではなく陸上の水槽でエビを育てる方法です。能登アクアファームは、河川水の影響を受けず雑菌の少ない海洋深層水を水槽に使い、稚エビの生産に取り組んでいます。養殖業者が、その稚エビを受け取り、出荷できる大きさまで育てる想定です。

市場課題|エビは約92%を輸入で賄い、国内の養殖は少ない

現状のエビ養殖の課題

輸入が約92%で供給は海外次第

バナメイエビ(クルマエビ科の一種)は世界で最も多く養殖されているエビで、日本ではすしなどに使われています。日本で消費されるエビは約92%が輸入で賄われ、国内の養殖は一部です。このままでは、エビの入手が海外の事情に左右され続けかねません。

設備投資が大きく参入しにくい

陸上養殖は、大規模な設備投資が必要で、新規参入のハードルが高い分野とされています。加えて、バナメイエビ養殖には、高品質な稚エビを安定して確保することが欠かせないとされています。設備に加え稚エビの確保も自前で行うとなれば、小規模な担い手は養殖を始めにくい状態が続きかねません。

他にも、能登町小木のイカ釣り漁船の減少、能登半島地震で被害を受けた漁業の施設、国産エビの流通の少なさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 陸上養殖陸上に設けた水槽で、魚介類を育てる養殖である。海面の生けすと異なり、水温や水質を人が管理して飼育する。

能登アクアファームの強み|「エビの陸上養殖」を研究

能登アクアファームが「エビの陸上養殖」を研究

清浄な深層水で稚エビを育成

海洋深層水と比べ、表層の海水は河川水の影響を受けやすく、有害な雑菌も多いとされています。

同社が使う「能登海洋深層水」は、小木沖約3.7km、水深320mから取水した水で、河川水の影響を受けず雑菌が少ないといわれています。金沢大学の鈴木信雄教授(同社の最高技術責任者)らは2023年、ヒラメを高密度で飼育すると、表層水ではストレスホルモン(コルチゾル)が上がり、深層水では変わらないことを報告しました。これはヒラメでの結果です。同社は、エビの飼育にも有効な可能性があるとし、雑菌の少ない深層水を使えば、稚エビの飼育環境を安全で安定した状態に保てると判断しています。

手間の多い種苗生産を担う

エビ養殖で最も手間と時間を要してきた工程は、稚エビを生産する種苗生産とされています。

同社は、この種苗生産を担います。親エビから採卵してふ化した幼生を、約3週間かけて体長約10ミリまで育て、生きたまま国内の養殖業者へ引き渡す計画です。受け取った養殖業者は、3〜4カ月かけて体長15センチ前後、重さ約20グラムまで育てて市場へ出荷する流れです。同社は、全雌化(すべて雌の稚エビを生産する技術)を組み合わせるとしています。計画どおりに進めば、養殖業者は国内の同社から稚エビを調達できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 種苗養殖に用いる、稚魚や稚エビなどの幼い個体である。親から採卵し、養殖ができる大きさまで育てたものを指す。

エビの陸上養殖の未来|小木産のエビを、能登の新しい水産業へ

能登のエビの陸上養殖が変える未来

小木で稚エビの生産に成功

能登町の小木では、バナメイエビの稚エビの生産が実現しました。同社は、石川県漁業協同組合小木支所の協力を得て、壊れた冷凍室を水槽の設置に再利用しています。2025年秋までに、深層水を引いた小木支所内の水槽で、稚エビの生産に成功しました。仕入れた50匹の親エビから取った稚エビは、出荷できるめどがつく大きさに育ち、地元で稚エビを生産する体制が動き出しています。

「小木産」エビの市場展開

同社は今後、「小木産バナメイエビ」として市場展開を本格化させます。漁協と連携して地域ブランドエビを開発する方針です。養殖業者は、稚エビを受け取って育て、体長15センチ前後のエビとして出荷する流れです。国内で育ったバナメイエビの流通が増えれば、輸入に左右されにくい食卓に近づきます。

小規模な養殖モデルを目指す

同社は、誰もが始められる「新しい陸上養殖モデル」の全国展開を目指しています。同社は、小規模でも成り立つ陸上養殖として、地域の人が空き施設などで小さく始められる形を想定しています。あわせて、再生可能エネルギーの創出と共に事業を進める方針です。実現すれば、被災した地域でも、年齢や体力に関係なく取り組める水産業の仕事が生まれ、国産のエビを食べる機会も増えると、同社は見込んでいます。

会社概要|金沢大学の研究から生まれた能登アクアファーム

能登地震後の2025年に設立

能登アクアファーム株式会社は、2025年2月20日に設立された金沢大学発の企業で、本社は石川県鳳珠郡能登町小木にあります。代表取締役CTO(最高技術責任者)の鈴木信雄氏は、金沢大学環日本海域環境研究センターの教授で、魚類のストレス低減技術を研究してきました。代表取締役CEOは平良香織氏、取締役専務は山根史裕氏です。同社は、2024年1月の能登半島地震で被災した能登町で、鈴木教授の研究成果を生かし、エビの種苗生産による新産業の創出に取り組んでいます。

金沢大学認定ベンチャー8社目

2025年10月30日、金沢大学から、研究成果を活用して起業した法人に授与する「金沢大学認定ベンチャー」の称号を授与されました。8社目の認定で、授与式では、和田隆志学長から平良CEOに称号が授与され、鈴木CTOに記念盾が手渡されました。事業では、石川県漁業協同組合小木支所の協力を得て、同支所内に水槽を設置しています。同社の種苗生産は、神奈川大学の大平教授が開発した全雌化の種苗生産技術と、金沢大学の鈴木教授による海洋深層水を活用した育成技術の組み合わせとされています。

稚エビの供給を軸にした事業

事業の中心は、稚エビを国内の養殖業者へ引き渡す種苗生産です。養殖業者が出荷できる大きさまで育て、同社は漁協と連携して地域ブランドの市場展開を進めます。資金面では、2025年5月に創業融資が決まり、同年6月にはクラウドファンディングのFor Goodで、種苗生産設備の導入・修繕と、海洋深層水を活用した実験の継続を資金使途に、募集を始めました。

会社情報

会社名能登アクアファーム株式会社
所在地石川県鳳珠郡能登町字小木34字11番地
設立2025年2月20日
代表代表取締役CEO 平良香織。代表取締役CTO 鈴木信雄(金沢大学環日本海域環境研究センター教授)。取締役専務 山根史裕
調達創業融資(2025年5月決定)。クラウドファンディング(For Good・2025年6月募集開始)
事業バナメイエビの種苗生産と陸上養殖技術の確立。漁協と連携した地域ブランドエビの開発と市場展開
技術領域能登海洋深層水を使った種苗生産。金沢大学の鈴木教授による深層水を活用した育成技術と、神奈川大学の大平教授が開発した全雌化の種苗生産技術の組み合わせ
連携石川県漁業協同組合小木支所
採択金沢大学認定ベンチャー称号(2025年10月30日・8社目)

編集後記|FrontJournal編集部より

地震とイカ漁の減少が重なった港で、深層水を使って稚エビを育てる。能登アクアファームの取り組みは、地域に残された水と壊れた冷凍室から、新しい水産業を起こそうとする試みです。鈴木教授の魚類の研究成果を活かしてエビの種苗生産に挑む点に、大学発の取り組みらしさを感じました。

稚エビを養殖業者へ渡し、小さな設備から始められるようにする考え方は、設備投資の大きさという参入の壁への、一つの答えだと思います。小木の稚エビから育ったエビが食卓に並ぶ日が来れば、能登の海の恵みが、地元の新しい産品として根づく日を期待したくなります。復興と産業の創出を両立させる取り組みとして、今後に注目したいところです。

能登の水が育てるエビが、地域の仕事と国産エビの選択肢を増やしていく日を楽しみにしています。金沢大学から生まれたほかの企業は、金沢大学発・関連スタートアップ8選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年10月3日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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