ロータス・サーマル・ソリューション「ロータス金属」を研究|レンコン状の気孔が並ぶ金属のヒートシンクを描いたイラスト

株式会社ロータス・サーマル・ソリューション

ロータス・サーマル・ソリューション「ロータス金属」を研究|研究領域=細長い気孔が・一方向に並ぶ金属/強み=熱を冷媒の・沸騰で運び去る/将来性=液浸サーバーや・車載半導体の冷却へ

企業紹介|株式会社ロータス・サーマル・ソリューションとは?

発熱の大きい半導体を、小さな部品で冷やす材料として、注目を集める「ロータス金属」。株式会社ロータス・サーマル・ソリューションは、その社会実装を目指す、大阪大学発の材料系ディープテック企業です。沸騰冷却に使うヒートシンク(熱を逃がす放熱部材)などを、サーバーやパワー半導体の冷却向けに製造・販売しています。

キーワード「ロータス金属」

「ロータス金属」は、レンコンのように細長い気孔が一方向にそろって並ぶ多孔質金属です。特徴は、気孔の内壁が熱を逃がす広い面となり、気孔の中を冷媒(熱を運ぶ液体)が通って熱を運べる点にあります。サーバーの部品やパワー半導体(電力の変換や制御に使う半導体)のように発熱の大きい部品を、小さな冷却器で冷やせます。

市場課題|半導体の発熱が増え、機器を冷やす負担が大きくなっている

現状の半導体の冷却の課題|現状は、発熱の集中で冷却器と空調の負担が増す|発熱が集中し・冷却器の負担増/サーバーの・冷却電力が増加

発熱が集中し冷却器の負担増

半導体の小型化と大電力化が進み、素子(半導体チップ)の面積あたりの発熱密度が高まっています。SiC(炭化ケイ素)を使うパワー半導体では、発熱密度が1平方センチメートルあたり300〜500ワットに達します。発熱密度が高まるほど素子の温度は耐熱の限界に近づき、冷却器にはより多くの熱を運び去る力が必要です。

サーバーの冷却電力が増加

データセンターでは、サーバーを冷やす空調の電力が増える傾向にあります。生成AIの普及で処理する情報量が増え、サーバーの発熱量が高まるためです。空冷では局所的な高温が生じやすく、ラック(サーバーを収める棚)に積むサーバーの電力を低く制限して運用する施設が多いとされます。

他にも、電気自動車の駆動系の半導体でも放熱の確保が求められます。冷却水の配管や設備の維持、部品の小型化で狭くなる冷却器の設置スペース、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 発熱密度素子などの単位面積あたりに発生する熱の量を指す。同じ量の熱でも、狭い面積に集まるほど発熱密度は高くなり、その面から熱を運び去る冷却の能力がより強く求められる。

ロータス・サーマル・ソリューションの強み|「ロータス金属」を研究

ロータス・サーマル・ソリューションが「ロータス金属」を研究|今後は、ヒートシンクで熱の除去が可能に|沸騰を促し・集中した熱を除去/沸騰冷却で・冷却電力を削減

沸騰を促し集中した熱を除去

従来の沸騰型の冷却器では、限界熱流束(沸騰で運び去れる熱の上限)が1平方センチメートルあたり約200ワットにとどまっていました。

同社のヒートシンクは、「ロータス金属」を冷媒が沸騰する面に使い、沸騰を促して熱を運び去ります。レンコン状に並んだ気孔は、冷媒の流れ蒸気の排出を効率よく進める通り道です。気孔の内壁が冷媒に触れる面積を広げ、多くの熱を冷媒へ渡すことも特徴です。この方式で、限界熱流束は1平方センチメートルあたり530ワット以上に高まりました。この値はSiCのパワー半導体の発熱密度を上回るため、発熱の大きい素子でも沸騰が途切れにくく、冷却器を小さく保ちやすくなります。

沸騰冷却で冷却電力を削減

空気でサーバーを冷やす方式では、ファンと空調を動かし続けるため、冷却そのものに多くの電力を使います。

同社は、サーバーのCPU(計算を担う中心の半導体)など発熱の大きい部品に「ロータス金属」の沸騰冷却器を取り付け、部品の熱を冷媒の沸騰で直接運び去ります。冷媒の気化熱(液体が気体に変わるときに周囲から奪う熱)を使うため、ファンで空気を送る方式よりも少ない電力で冷やせます。この冷却器を組み込んだサーバーシステムでは、従来の空冷のサーバーと比べて冷却の電力をおよそ90%以上削減できることが実証済みです。データセンターでは、サーバーを冷やすための電気代を抑えられます。

FrontJournalの解説
  • 限界熱流束沸騰によって加熱面から運び去れる熱の量の上限を指す。これを超えると加熱面が蒸気の膜に覆われて冷媒が届きにくくなり、面の温度が急に上がるため、沸騰型の冷却器の性能を表す指標として使われる。

ロータス金属の未来|サーバーから車載まで、半導体の冷却を支える

気孔の並ぶロータス金属が変える未来|サーバーから車載まで、冷却を支える|大阪の工場で・量産を開始/液浸サーバーの・実証を計画/車載半導体の・冷却を目指す

大阪の工場で量産を開始

大阪市西淀川区御幣島の工場で、同社はヒートシンクの量産を始めています。材料のロータス金属は、水素ガスを溶け込ませた銅を一方向に冷やし固め、気孔を一方向にそろえた金属です。同社は、ヒートシンクの大きさから最適な冷媒の流量と熱抵抗(熱の伝わりにくさ)を求める設計ツールも公開しています。機器メーカーはこのツールで用途に合う寸法を選べるため、量産品を製品に採用しやすくなります。

液浸サーバーの実証を計画

同社は、ヒートシンクを組み込んだ液浸サーバー(電気を通さない液体に沈めて冷やすサーバー)の実証実験を、東北大学青葉山新キャンパスの放射光施設「NanoTerasu」で進める計画です。この実証は、「Go-Tech事業」(中小企業の研究開発を国が支援する事業)に採択されたテーマの一環です。実証では、少ない電力で冷やせるかを確かめます。研究施設での運転データが積み上がれば、データセンターの事業者が導入を判断しやすくなります。

車載半導体の冷却を目指す

同社は、電気自動車のインバーター(直流を交流に変える装置)に使うSiCパワー半導体の冷却器の実用化も目指しています。SiCのパワー半導体は、高い発熱密度に見合う冷却が欠かせません。JX金属(銅などの非鉄金属メーカー)とは、車載用と計算機用の放熱器の実用化に向けて協業を進めてきました。発熱の大きい半導体を小さな部品で冷やせるようになれば、サーバーから電気自動車まで、機器の小型化と省エネを両立しやすくなります。

会社概要|株式会社ロータス・サーマル・ソリューションの事業内容・設立背景

大阪大学の研究から設立

株式会社ロータス・サーマル・ソリューションは、2016年1月に設立された大阪大学発のベンチャーです。基盤となるロータス金属は、大阪大学産業科学研究所の中嶋英雄氏らが研究を進めてきた、一方向に気孔が並ぶ多孔質金属です。同社は大阪大学の材料系に伝わる「使われてこそ材料」をモットーに、ロータスアロイ株式会社と連携して技術開発を進めています。代表取締役社長は井手拓哉氏です。事業として、ロータス金属を用いた熱製品の製造・販売と、熱設計・放熱技術の指導を手がけています。

国の支援と共同研究で実用化

同社は、国の研究開発支援と、大学・企業との連携を重ねています。2017年から2021年にかけて、JST(科学技術振興機構)の「A-STEP」(大学の研究成果の実用化を支える制度)の支援を受け、山陽小野田市立山口東京理科大学の結城和久教授の研究成果をもとに、沸騰冷却器の実用化開発を進めました。2025年度には「Go-Tech事業」にも採択されています。2026年6月には、電子部品商社のエレマテックと共同で、台湾の見本市「Computex 2026」に液浸沸騰冷却サーバー向けのソリューションを出展しました。

5億円規模の資金調達を実施

同社は2026年2月、5億円規模資金調達を実施しました。Go-Tech事業による支援と、篠原電機・エレマテックを引受先とする第三者割当増資(特定の相手に新株を発行する方法)を合わせた調達です。調達した資金は、量産体制の強化、製造工程の高度化、人材の採用に充てます。2020年8月には、JX金属が同社に出資しています。

会社情報

会社名株式会社ロータス・サーマル・ソリューション(Lotus Thermal Solution Inc.)
所在地〒530-0001 大阪市北区梅田1丁目1-3 大阪駅前第3ビル2階267号室。工場:大阪市西淀川区御幣島1丁目9-23
設立2016年1月
代表代表取締役社長:井手 拓哉
資本金2億3,560万円
調達総額5億円規模(Go-Tech事業および第三者割当増資/引受先:篠原電機、エレマテック/2026年2月)。JX金属による出資(2020年8月)
事業ロータス金属を用いた熱製品の製造・販売。熱設計、放熱技術指導
技術領域細長い気孔が一方向に並ぶ多孔質金属「ロータス金属」(ロータス型ポーラス金属)を用いたヒートシンク。沸騰冷却・液浸冷却・空冷・水冷に対応
連携ロータスアロイ株式会社(技術開発)。JX金属(車載用・計算機用放熱器の実用化に向けた協業/2020年8月)。山口東京理科大学、大阪大学、シーマ電子(共同研究)
採択JST 研究成果最適展開支援プログラム「A-STEP」(2017〜2021年)。Go-Tech事業「グリーントランスフォーメーション(GX)を実現する低消費電力次世代サーバー冷却技術の開発と実証」(令和7年度)
URLhttps://www.lotus-t-s.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

金属の中に一方向の気孔をあえてつくることで、熱をよく逃がす部品にする。この逆転の発想に引きつけられました。穴があると弱くなりそうに思えますが、一方向にそろえた気孔は、冷媒と蒸気の通り道として働いています。

印象に残ったのは、材料の研究が工場での量産まで進んでいる点です。大学で磨かれた材料の知見が、データセンターの電力という身近な社会の課題に結びついています。「使われてこそ材料」という言葉どおりの歩みです。

レンコン状の気孔を持つ小さな金属が、計算機と電気自動車の熱をどこまで引き受けていくのか、これからの展開に注目しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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