スパークリングフォトン「パルスジェットメス」を開発|液体ジェットが組織に当たる様子のイラスト

スパークリングフォトン株式会社

スパークリングフォトン「パルスジェットメス」を開発|研究領域=液体ジェットで・組織を砕くメス/強み=弾性率の差を使い・血管の温存を狙う/将来性=臨床研究を実施・不整脈は治験計画

企業紹介|スパークリングフォトン株式会社とは?

手術で重要な部位を残しながら組織を砕くことを目指す技術として、注目を集める「パルスジェットメス」。スパークリングフォトン株式会社は、その社会実装に取り組む、医療機器系ディープテック企業です。液体ジェットを使う手術装置と、衝撃波を使う治療装置を、医療の現場に向けて開発しています。

キーワード「パルスジェットメス」

「パルスジェットメス」は、水中へのレーザー照射で生じる高速の液体ジェットを組織に当てて砕く手術装置です。特徴は、組織の弾性率(変形しにくさを表す値)の違いを利用し、弾性率の高い脈管(血管など)を残して砕ける可能性がある点にあります。血管や神経が近い、狭い場所の手術への応用が進められてきました。

市場課題|狭い術野では重要な組織の保護が必要

現状の手術と治療の課題|現状は、近くの重要な組織を守りながら処置する必要|狭い術野で・神経や血管を保護/従来の高周波は・熱で組織を凝固

術野が狭く神経や血管が近い

下垂体腫瘍(脳下垂体の腫瘍)の手術では、狭い術野(手術で操作する範囲)で、血管や神経などの重要な組織を保護しながら、病変を切除する必要があります。鼻腔から蝶形骨(頭蓋底の骨)を経て腫瘍に届く経蝶骨的下垂体腫瘍切除術もあります。病変の摘出と機能の温存の両立が、大きな課題です。

従来の不整脈治療は熱を利用

不整脈の治療で行われるアブレーション(組織を処置する治療)のうち、従来の高周波方式は、カテーテル(細い管)から流す高周波電流の熱で、組織を凝固させる方法です。発熱を利用するため深部に届きにくく、心外膜側(心臓の外側)から生じる頻脈性心室性不整脈(心室で脈が速くなる不整脈)は、治療が難しいとされています。熱に依存しない方法の研究開発も進行中です。

他にも、狭い術野で使える小型の先端部、心筋深部の標的組織への作用、組織の境界に沿った剥離、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • アブレーション体内の標的となる組織に外から作用を与え、その働きを失わせて処置する治療を指す。不整脈の治療では、異常な電気信号の通り道に作用させる。

スパークリングフォトンの強み|「パルスジェットメス」を開発

スパークリングフォトンが「パルスジェットメス」を開発|これまでに、多施設の臨床研究を実現|弾性率の差で・選んで砕く狙い/衝撃波を収束し・機械的に処置する狙い

弾性率の差を使う選択的な破砕

剛性体(変形しない硬い物体)との衝突とは異なり、液体ジェットの圧力は周囲に分散する性質があります。

液体ジェットは、光ファイバーで導いたレーザー光を、アプリケータ(液体ジェットを出す先端部)内部の水に照射して発生させます。水の中で気泡が生成して膨張し、押し出された水がノズルを通ることで、初速が約30m/sの液体ジェットとなる仕組みです。液体ジェットは比較的弾性率の低い組織に作用しやすく、弾性率の高い脈管を温存しながら組織を砕ける可能性があります。血管や神経が近い術野でも、病変の摘出と機能の温存を両立できるようになることが、同社の目指す姿です。

衝撃波で機械的な作用を使う

熱凝固を使う方式は、組織への作用が発熱に依存します。

「衝撃波カテーテルアブレーションシステム」は、レーザーで生じる衝撃波をカテーテルの先端で収束させ、その機械的な作用で組織を処置することを目指す研究開発装置です。水中にレーザー光を照射すると気泡が急速に膨張し、周囲の水に高い圧力の層ができて、球状の衝撃波が発生します。半回転楕円体型(楕円を回した形)の反射鏡で、第1焦点の衝撃波を第2焦点に集める構造です。衝撃波は細胞膜に機械的な影響を与え、条件によっては細胞死を誘発します。実現すれば、熱凝固とは作用の異なる不整脈治療の選択肢が広がります。

FrontJournalの解説
  • 弾性率物体に力を加えたときの、変形のしにくさを表す値を指す。値が大きいほど硬く変形しにくい。生体では、組織の種類によって値が異なる。

光と衝撃波の未来|臨床研究から不整脈治療の治験計画へ

光と衝撃波が変える医療の未来|臨床研究と、治験と販売の計画|下垂体腫瘍の・臨床研究を実施/不整脈の探索的・治験を計画/不整脈の装置は・2030年春ごろ目標

下垂体腫瘍の臨床研究を実施

「パルスジェットメス」は、下垂体腫瘍の手術への応用が進められてきた装置です。2012年3月に、多施設臨床研究が実施されました。共同開発機関は、第1次が東北大学脳神経外科・東北大学流体科学研究所・東京電機大学・産業技術総合研究所、第2次が東京科学大学神経外科などです。狭い術野で使うハンドアプリケータも開発されました。

不整脈の探索的治験を計画

「衝撃波カテーテルアブレーション」では、頻脈性心室性不整脈の患者を対象とする探索的治験(有効性と安全性を探る初期の治験)の開始が計画されています。同社は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)との医療機器戦略相談で、治験開始に関する助言を受けています。2026年3月3日には、サウンドウェーブイノベーション株式会社が、事業化に関する提携を発表しました。スパークリングフォトンはこの装置を構成するレーザー装置の製造と供給を担い、サウンドウェーブ側が治験を推進します。

2030年春ごろの販売を目指す

「衝撃波カテーテルアブレーション」の販売時期は、承認の取得後の2030年春ごろが目標です。サウンドウェーブイノベーションの発表では、2029年末に検証的治験(有効性と安全性を確かめる治験)の完了を予定し、その後に製造販売承認(販売に必要な国の承認)の手続を速やかに行う計画があります。承認の取得後は、全国の医療機関での治療開始に向けて、両社が展開を進める方針です。実現すれば、不整脈の治療に、熱凝固とは異なる作用の選択肢が加わります。

会社概要|東京都多摩市でレーザーと衝撃波の医療機器を開発する会社

レーザーと衝撃波を核に設立

スパークリングフォトン株式会社は、2000年12月に設立され、本社は東京都多摩市にあります。設立の目的は、レーザーと衝撃波を核技術とする研究開発・製造・販売です。2002年10月には、東北大学流体科学研究所のレーザー誘導衝撃波とレーザー誘発液体ジェットの研究に用いる、Ho:YAGレーザー(波長約2.1µmで発振する固体レーザー)の発振装置を開発しました。代表取締役は金田道寛で、販売先は防衛・警備、産業・インフラ、医療の分野です。

事業採択と受賞の経過

2011年3月には、パルスジェットメスの開発が、経済産業省の病院・企業間の連携支援事業に採択されました。衝撃波カテーテルアブレーションシステムの開発は、2018年度から2020年度まで日本医療研究開発機構(AMED)の医療機器開発推進研究事業に採択され、2021年度には橋渡し研究プログラムにも採択されています。2025年12月には、多摩信用金庫の第23回「多摩ブルー・グリーン賞」で、レーザーレーダー(レーザー光で距離を測る装置)用のレーザー発振装置が多摩ブルー賞(技術・製品部門)の優秀賞を受けました。

装置の開発と研究の広がり

悪性脳腫瘍を対象とする多チャンネルレーザー温熱治療装置は、2019年9月に東京都の医療機器産業参入促進助成事業に採択されています。眼底の断層を撮影する光干渉断層計(OCT)の開発も、2013年に始まりました。事業は、レーザーと衝撃波の発生装置・応用装置、画像装置の研究開発・製造・販売等です。

会社情報

会社名スパークリングフォトン株式会社
所在地東京都多摩市乞田1154-1
設立2000年12月
代表代表取締役 金田道寛
資本金2,500万円
従業員4人
事業レーザー発振装置・レーザー応用装置・衝撃波発生装置・衝撃波応用装置・画像装置の研究開発・製造・販売。販売先は防衛・警備、産業・インフラ、医療
技術領域レーザー誘発液体ジェット(パルスジェットメス)。レーザー誘導衝撃波(衝撃波カテーテルアブレーションシステム)
連携サウンドウェーブイノベーション株式会社(衝撃波カテーテルアブレーションの事業化に関する提携。2026年3月3日に発表)。パルスジェットメスの共同開発機関として東北大学、東京電機大学、産業技術総合研究所、東京科学大学
採択パルスジェットメスが経済産業省の病院・企業間の連携支援事業に採択(2011年)。衝撃波カテーテルアブレーションシステムがAMEDの医療機器開発推進研究事業(2018〜2020年度)と橋渡し研究プログラム(2021年度)に採択。多チャンネルレーザー温熱治療装置が東京都の助成事業に採択(2019年)
URLhttps://www.sparkling-photon.com

編集後記|FrontJournal編集部より

手術で大切なのは、取り除くべきものを取り除き、残すべきものを残すことです。スパークリングフォトンは、水とレーザー光が生む液体ジェットを用いて、その両立に取り組んでいます。2000年の設立以来、レーザーと衝撃波を核技術としてきた点が印象的です。

下垂体腫瘍の手術から不整脈の治療まで、水中のレーザーが生む気泡の働きを軸に、別々の課題へ向き合っている点が、この会社の特徴です。臨床研究や治験の計画といった具体的な歩みが、技術の広がりを支えています。公的な事業への採択を重ねてきた点も、取り組みの継続を物語っています。

重要な組織を残しながら病変を取り除く手術が広がれば、治療を受ける人の暮らしを守りやすくなります。光と衝撃波の技術が医療の選択肢を増やし、患者さんとご家族の毎日が前向きに変わることを、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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