2026.11.03 │ 埼玉大学・名古屋大学・理化学研究所 │ 元発表:2026.10.28

埼玉大学・名古屋大学・理研、植物ホルモンが働く場所を操る手法

ニュース紹介

「植物ホルモンが「働く場所」を操る-ジベレリンによる根の成長の仕組みを解明-」

埼玉大学理工学研究科の中村匡良教授(研究開始当時:名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)特任准教授)は、名古屋大学大学院理学研究科の八神祐一郎博士後期課程学生、WPI-ITbMのウォルフ・フロマー客員教授、理化学研究所環境資源科学研究センターの萩原伸也チームディレクター、伊丹健一郎チームディレクターらと共同で、植物の成長を調節するホルモン「ジベレリン(GA)」が、植物の「どこで」働くことが成長に重要なのかを明らかにしました。

研究グループは、天然のGAとは異なる「合成GA(sGA)」と、それを特異的に認識するよう改変した「GA受容体(mGID)」を組み合わせ、特定の細胞層だけでGAシグナルを作動させる人工的なシステムを開発しました。シロイヌナズナの根に適用したところ、根の伸長には内皮と表皮という異なる細胞層でのGAシグナルの協調が重要であると分かりました。GAを合成する細胞と作用する場所が空間的に異なることから、GAが細胞間を移動して作用する可能性も示されました。本研究成果は英国の学術誌「Nature Plants」に2026年10月22日(日本時間)に公開されました(DOI:10.1038/s41477-026-02438-x)。

出典:埼玉大学 2026年10月28日 プレスリリース
https://www.saitama-u.ac.jp/topics_archives/202610281000.html
理化学研究所の発表(2026年10月29日):https://www.riken.jp/press/2026/20261029_2/index.html

FrontJournalの解説

ジベレリンとは(茎や根の伸びを促す植物ホルモン)

「ジベレリン」(GA)は、細胞の伸長や分裂を促し、茎や根の成長を調節する植物ホルモンです。約100年前、日本の植物病理学者が、イネの苗が異常に伸びる「馬鹿苗病」の原因物質として見出しました。20世紀後半の「緑の革命」に貢献したイネやコムギの品種は、背丈が低い半矮性を持っていました。その原因がGAの合成や受容の阻害だったことから、GAは農業の面でも重要な物質と位置づけられています。

①合成GAと改変受容体で、狙った細胞層だけを動かす

植物の体内では、GAを作る細胞と、実際にGAが作用する細胞が必ずしも一致しません。そこで研究グループは、天然のGAとは異なる「合成GA」(sGA)と、それだけを特異的に認識する「改変GA受容体」(mGID)を組み合わせました。この仕組みによって、特定の細胞層だけでGAの信号を働かせ、どの場所での働きが成長に効くのかを直接調べられるようになりました。

②根の伸長は内皮と表皮の協調で進む

実験には、植物研究のモデルとして広く使われるアブラナ科の「シロイヌナズナ」の根を用いました。その結果、根の内部にある「内皮」と、最も外側の「表皮」の両方でGAの信号が協調して働くことが、根の伸長に重要だと分かりました。GAを合成する細胞と作用する場所が空間的に離れていることから、研究グループは、GAが細胞の間を移動して作用する可能性も示しています。

FrontJournalからのひとこと

植物ホルモンが「いつ」「どこで」働くかを直接調べられる点に、今回の手法の価値があります。研究グループは、器官ごとの成長を制御する技術や、農作物の生産性向上・効率的な栽培技術への応用を挙げています。GAが品種改良に関わってきた歴史を踏まえると、細胞層ごとの働きを解き明かす基礎研究が農業の現場にどうつながるか、今後の展開に注目します。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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