2026.11.02 │ 理化学研究所・東京大学 │ 元発表:2026.10.30

理化学研究所ら、未来の観測記録で光の量子状態の推定を改善

ニュース紹介

「「未来」の観測が明らかにする光の量子ダイナミクス-量子技術の高性能化へ向けた重要な成果-」

理化学研究所量子コンピュータ研究センターの横山翔竜上級研究員、米澤英宏チームディレクター、東京大学大学院工学系研究科のワリット・アサバナント助教(研究当時)らの国際共同研究グループは、「過去」と「未来」の観測記録を組み合わせて光の量子状態のダイナミクスを推定する「量子状態スムージング」を初めて実証しました。

研究グループは、推定を行う観測者には見えない情報を別の隠れた観測者が測定するという理論上の設定を、光共振器と二つの検出器による実験で再現しました。過去の記録だけを使う従来の手法よりも、基準となる「真の状態」に近い推定が得られ、真の状態との差は純度で10.3±1.6%、スクイージングで7.6±2.6%縮まりました。本研究は科学雑誌「npj Quantum Information」オンライン版(10月21日付)に掲載されました(DOI:10.1038/s41534-026-01390-0)。

出典:理化学研究所・東京大学 2026年10月30日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20261030_2/index.html

FrontJournalの解説

量子状態の推定と「スムージング」

今回のテーマは、光の量子状態をどれだけ正確に推定できるかという問題です。ある時刻の信号を、その後の観測記録も手掛かりに推定する方法を「スムージング」と呼び、移動する物体の位置の推定など、古典的な信号処理で古くから使われてきました。

量子の世界では観測そのものが状態に影響を与えるため、古典的な計算法をそのまま当てはめると、不確定性原理(位置と運動量の揺らぎを同時に小さくしきれない性質)と矛盾する結果が出ることがあります。この課題に対し、オーストラリアの「グリフィス大学」の研究者らが2015年に理論として提案したのが量子状態スムージングです。

①隠れた観測者「Bob」を実験で再現

理論の検証で鍵を握ったのは、比較の基準となる状態の作り方でした。研究グループは、光を閉じ込める光共振器から出た光を二つに分け、推定役の検出器Aliceと、隠れた観測者役の検出器Bobで測りました。

推定にはAliceの記録だけを使い、AliceとBobの両方の記録から求めた状態を基準に置いています。推定対象のスクイーズド状態は、光の特定の成分の揺らぎを真空状態より小さくした状態を指し、量子技術の根幹を成すとプレスリリースは説明しています。

②純度とスクイージングの推定が真の状態に近づく

スムージングによる推定は、過去の記録だけを使うフィルタリングよりも、真の状態からのずれが小さくなりました。純度は量子状態の混ざり具合を表す指標で、純粋な状態で1になり、1に近いほど多くの量子情報処理に適します。

光の揺らぎをどれだけ抑えたかを示すスクイージングでも、推定値が真の状態に近づきました。スクイーズド光はドイツの重力波検出器「GEO600」で測定感度を高める用途にも使われ、量子計測を支える技術として実績があります。

FrontJournalからのひとこと

観測記録を保存して後から処理できる実験では、解析の手法を変えるだけで推定の精度を高められる点が特徴です。プレスリリースは測定誘起型の量子コンピュータなどでの活用に期待を示しており、適用できる条件や対象を広げる今後の研究が注目されます。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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