2026.09.01 北海道大学 元発表:2026.08.31

北海道大学ら、全固体電池向け高温相を室温で保てる理由を解明

ニュース紹介

「準安定固体電解質が急昇温で合成できる謎を解明」

北海道大学大学院工学研究院の三浦章教授、藤井雄太助教、忠永清治教授、ミシガン大学のスン・ウェンハオ助教、大阪公立大学大学院工学研究科の森茂生教授、作田敦准教授、東北大学金属材料研究所の林晃敏教授、東京都立大学の水口佳一教授、広島大学の森吉千佳子教授、高輝度光科学研究センター(JASRI)の河口彰吾主幹研究員らの研究グループは、次世代全固体電池の固体電解質材料Li3PS4において、最も高いリチウムイオン伝導度を持つ高温相(α相)が、なぜ急昇温プロセスによって合成できるのかという謎を解明しました。

Li3PS4のα相は480℃以上の高温でのみ熱力学的に安定であり、室温へ冷却するとイオン伝導度の低いγ相へ相転移してしまいます。しかし近年、ガラスの前駆体を急速加熱することでα相が生成し、さらに室温に急冷保持できることが報告されていました。

研究グループは、第一原理計算と、大型放射光施設SPring-8を用いた高時間分解能のX線回折実験を組み合わせ、急昇温によりナノサイズのα相の優先的な核生成が中温度域で引き起こされ、短い保持時間によって結晶成長を抑制することが、準安定なα相を選択的に合成・保持できる理由であることを突き止めました。本研究成果は2026年8月22日付で科学誌『Nature Communications』にオンライン掲載されました。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年8月31日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260831/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

全固体電池は、電解液の代わりに固体の材料でリチウムイオンを運ぶ電池です。液体を使わないため発火の心配が小さく、次世代の電池として開発が進んでいます。

性能を決めるのが固体電解質で、イオンをどれだけ速く通せるかが要点になります。材料は同じでも、原子の並び方(相)が変わると伝導度は大きく変わります。研究者が目指しているのは、よく通す相を室温でも保つことです。

①よく通す相は高温でしか安定しない

固体電解質Li3PS4で最も高いリチウムイオン伝導度を示すのはα相ですが、これは480℃以上の高温でのみ熱力学的に安定です。

室温まで冷やすと、伝導度の低いγ相へ変わってしまいます。近年、ガラスの前駆体を急速に加熱するとα相ができ、室温でも保持できることが報告されていましたが、その理由は分かっていませんでした。

②ナノサイズで核ができ成長が止まっていた

研究グループは第一原理計算と、大型放射光施設SPring-8による高時間分解能のX線回折実験を組み合わせました。

その結果、急速な加熱によってナノサイズのα相の核が中温度域で優先的にでき、保持時間が短いために結晶の成長が抑えられることが分かりました。α相は表面エネルギーが極めて低く、ナノサイズの領域では中温度域でも安定になります。

編集部からひとこと

高温でしか安定しないはずの相を室温で使う、という一見おかしな話に理由が付きました。鍵は結晶を大きく育てないことで、加熱の速さと保持時間が材料の状態を決めています。研究グループは理論と実験から時間-温度-変態図を作っており、狙って準安定相を作るための指針として使える形になっています。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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