2026.10.29 │ 理化学研究所・高輝度光科学研究センター │ 元発表:2026.10.28

理化学研究所ら、X線レーザーで固体からのテラヘルツ波放射を観測

ニュース紹介

「世界で初めてX線レーザー照射による固体からのテラヘルツ波放射を観測-X線の差周波過程を世界で初めて実証-」

高輝度光科学研究センターXFEL利用研究推進室の貴田徳明主幹研究員(理化学研究所放射光科学研究センター客員研究員)、理化学研究所放射光科学研究センターの澤田桂高度研究支援専門職らは、X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAを用いて、X線レーザー照射による固体からのテラヘルツ波放射の観測に初めて成功しました。

この現象は、周波数の異なる二つのX線から、その周波数の差に相当する新しい光が生じる「差周波発生」に由来することを明らかにし、X線からテラヘルツ波への約1億分の1の光周波数変換を実証しました。対象は半導体のZnTeで、10 keV、10 fsのXFELパルスを単結晶に照射しています。結晶方位依存性の解析から、差周波発生には結晶の対称性に依存する成分と依存しない成分があり、後者が最大放射強度の70%以上を占めることを発見しました。成果はNature Communicationsに掲載が決まり、10月20日に early-access version が公開されました(DOI:10.1038/s41467-026-78823-z)。

出典:高輝度光科学研究センター・理化学研究所 2026年10月28日 プレスリリース
https://www.jasri.jp/development-search/press_prize/release/2026/261028_1.html

FrontJournalの解説

差周波発生とテラヘルツ波とは

今回のテーマは「差周波発生」です。プレスリリースによると、周波数の異なる二つの光から、その周波数の差に相当する新しい光が生じる現象で、可視光や近赤外光の領域では赤外-紫外域の波長変換やイメージングなどに広く利用されています。

これに対しX線領域では、10年ほど前から研究が進められてきたものの、入射光と発生する光の位相を揃える条件(位相整合条件)を満たすことが難しく、観測には至っていませんでした。

①XFELの広い周波数幅に着目した

研究グループは、SACLAのXFELが約10 fs(1フェムト秒は1,000兆分の1秒)という極めて短いパルス幅と、約1000 THzの広い周波数幅を持つ点に着目しました。パルスに含まれる異なる周波数のX線同士で差周波発生が起こり、その低周波成分としてテラヘルツ波が放射されると考えたものです。

同様の現象は近赤外レーザー励起では「光整流」として知られ、テラヘルツ波を使った物性研究に広く応用されてきたと説明されています。

②結晶方位依存性から二つの成分を確認

研究グループは、テラヘルツ波の放射強度の結晶方位依存性、XFELの強度依存性、偏光特性を測定し、観測した波がX線の差周波過程によるものだと確認しました。

今後は、XFELの光子エネルギーを変えて特定の元素や電子状態を選んで励起し、その応答をテラヘルツ波として検出する新しい分光手法を目指しています。確立されれば、磁性体やトポロジカル物質を含む量子物質への応用が可能になるとしています。

編集部からひとこと

見えにくかったX線の差周波を、テラヘルツ波という別の窓から確かめた点が今回の特徴です。元素を選んだ励起と組み合わせた計測手法として形になるかが、次の注目点です。

FrontJournal編集部

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