2026.10.29 │ 大阪大学・科学技術振興機構(JST) │ 元発表:2026.10.28

大阪大学ら、炭素電極の劣化を左右する水のつながりを解明

ニュース紹介

「電極表面の“水のつながり”が炭素電極の劣化を左右することを解明~水の構造を整えて、安価な炭素電極を長持ちさせる新たな設計指針~」

大阪大学産業科学研究所の片山祐准教授らの研究グループは、韓国・浦項工科大学校(POSTECH)、ソウル大学校、ドイツ・デュースブルク=エッセン大学などの研究グループと共同で、炭素電極が高いプラスの電位のもとで酸化されて劣化する「炭素腐食」の速さが、電極表面にある水分子同士のつながり方(水素結合ネットワーク)によって左右され、そのつながりが乱れるほど腐食が速く進むことを、反応中の電極表面を直接観察することで明らかにしました。

反応が進行している最中の電極表面をリアルタイムで観察する「オペランド計測」を組み合わせ、水素結合ネットワークが途切れた「弱く結びついた水」が炭素腐食に優先的に関わっていることを示しました。電極を覆う高分子材料「アイオノマー」を選ぶことで電極表面の水の構造を整え、炭素腐食を抑えることにも成功しました。本研究成果は2026年10月24日(現地時間)付で、ドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載されました(DOI:10.1002/anie.8140389)。

出典:大阪大学・科学技術振興機構(JST) 2026年10月28日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20261028-3/index.html

FrontJournalの解説

炭素電極の「炭素腐食」とは

今回のテーマは、電気化学デバイスに使われる「炭素電極」の劣化です。プレスリリースによると、炭素電極は高いプラスの電位のもとで酸化され、「炭素腐食」と呼ばれる劣化を起こします。

これまでの劣化対策は、炭素材料の結晶性を高める、表面を化学的に修飾するなど、材料側の改良が中心でした。一方、炭素と反応する相手である水がどのような状態のときに反応しやすいのかは、解明されていませんでした。

①腐食の速さは電極表面の水のつながりで決まる

研究グループは、反応が進行している最中の電極表面を観察するオペランド計測(動作中の状態をそのまま測る手法)を使いました。その結果、電極表面の水分子同士の水素結合ネットワークが乱れるほど、炭素腐食が速く進むことが分かりました。

特に、水素結合が途切れた「弱く結びついた水」が炭素腐食に優先的に関わっていると示されています。

②アイオノマーの選択で水の構造を整えた

研究グループは、電極を覆う高分子材料のアイオノマーを選ぶことで、電極表面の水の構造を整え、炭素腐食を抑えることに成功しました。材料そのものを改良する従来の方法とは別に、水の構造を設計の対象にする考え方です。

応用先として挙げられているのは、水電解による水素製造や塩素製造、燃料電池などです。ページ本文には、腐食を抑えた程度を示す数値は載っていません。

編集部からひとこと

炭素電極の劣化は、これまで炭素材料の側から対策が考えられてきました。今回は水の側を整えるという別の入口が示されました。実際のデバイスで寿命の延びがどこまでかは、今後の検証で明らかになる点です。

FrontJournal編集部

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