2026.10.09 │ 東北大学・科学技術振興機構(JST) │ 元発表:2026.10.08

東北大学、低線量の電子顕微鏡データから結晶方位をAIで自動解析

ニュース紹介

「ノイズに埋もれた電子顕微鏡データからAIが結晶の向きを自動解読~電子線に弱い高分子材料の微細構造解析をAIで自動化~」

東北大学の研究グループは、電子線に弱い材料も測定できる低電子線量の4D-STEMデータから、結晶の微細構造を自動で解析する機械学習の手法を開発したと発表した。4D-STEMは、電子線で試料上を走査して各位置の電子回折図形を取得し、材料内部の結晶の種類と向きを可視化する測定法である。高分子材料では電子線量を下げる必要があり、回折図形を覆う大量のノイズが解析を難しくしていた。今回の手法は、ノイズのない正解データを必要としない自己教師あり深層学習による雑音除去(4D-SSD)と、結晶の面内回転に左右されない教師なし解析を組み合わせ、専門家が時間をかけて行っていた解析を自動化した。高分子のアイソタクチックポリスチレンの実測データで従来の解析結果を再現し、これまで解析されていなかった微量の結晶成分も新たに検出したという。研究グループは東北大学大学院情報科学研究科の上條快大学院生、同大学未踏スケールデータアナリティクスセンターの志賀元紀教授、同大学多元物質科学研究所の狩野見秀輔助教、宮田智衆准教授、陣内浩司教授ら。成果は科学誌『npj Computational Materials』に現地時間の2026年10月3日付でオンライン掲載された。研究は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業 CRESTなどの支援を受けた。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年10月8日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20261008-2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

金属やプラスチックの性質は、材料の中にある小さな結晶の並び方で大きく変わります。結晶がどの向きに並んでいるか、結晶の部分とそうでない部分がどう分布しているかを調べることは、材料開発の基本です。そのための代表的な道具が電子顕微鏡で、光より波長の短い電子線を使うため、ナノメートル(10億分の1メートル)単位の構造まで観察できます。

中でも4D-STEM(4次元走査透過電子顕微鏡法)は、細く絞った電子線で試料を走査し、場所ごとに電子回折図形(結晶で散乱した電子がつくる模様)を記録する方法です。走査の縦横2次元と回折図形の2次元を合わせて4次元のデータになり、結晶の向きの地図を描けます。一方、高分子は電子線を当てると壊れやすく、少ない電子量で測るとデータがノイズだらけになるという課題がありました。

①正解データなしでノイズを取り除く

AIでノイズを除く一般的な方法では、ノイズを含むデータとノイズのない正解データの組を大量に用意して学習させます。しかし、電子線に弱い材料では、強い電子線を当ててきれいなデータを撮ること自体ができません。今回使われた自己教師あり学習(データ自体から学習の手がかりを作る機械学習)は、正解データを必要としない点が特徴です。さらに研究グループは、結晶の面内回転(観察面の中で結晶が回っている向き)の違いに左右されない教師なし解析(正解を与えずにデータを分類する機械学習)を組み合わせ、結晶の種類と向きの判定までを自動化しました。

②専門家の手作業を置き換え、見落としも拾う

4D-STEMは1回の測定で膨大な数の回折図形が得られるため、データ量の多さが解析の負担になることが知られています。従来は、専門家がノイズの多い図形を見比べながら時間をかけて解析していました。今回の手法は、高分子のアイソタクチックポリスチレン(分子の側鎖が同じ向きにそろったポリスチレン)の実測データで、従来の解析結果を再現しました。そのうえで、これまで解析されていなかった微量の結晶成分も検出しています。人の目では拾いにくい成分を、データ全体から機械的に見つけられる点が、自動化のもう一つの利点です。

編集部からひとこと

電子顕微鏡の性能が上がるほど、測定で得られるデータは増え、解析する人の手間が研究の速さを左右するようになります。今回の成果は、情報科学と材料科学の研究者が組んで、その手間の部分に取り組んだものです。高分子に限らず、電子線に弱い材料は電池や医薬品などにも多く、ほかの材料への適用がどこまで進むかに注目したいと思います。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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