ICTECH「高温昇温脱離分析」を研究

株式会社ICTECH(アイシーテック)

ICTECH「高温昇温脱離分析」を研究

企業紹介|株式会社ICTECHとは?

炭素材料を1600℃以上まで加熱し、表面から離れる気体の量から炭素の層の端にある構造を調べる「高温昇温脱離分析」。株式会社ICTECH(アイシーテック)は、その社会実装を目指す、群馬大学発の素材・化学系ディープテック企業です。この分析技術を使い、リチウムイオン電池や燃料電池に使う炭素材料の受託分析を手がけています。

キーワード「高温昇温脱離分析」

「高温昇温脱離分析」は、真空中で試料を加熱し、表面から離れる気体の種類と量を温度ごとに測る分析法です。ICTECHは、水素や一酸化炭素、二酸化炭素などの脱離を1600℃以上の高温まで測り、炭素材料の「エッジサイト」(炭素の網目状の層の端の部分)の量と種類を求めます。この技術は、群馬大学で開発されました。

市場課題|炭素材料の構造が見えにくく開発が長引く

現状の炭素材料の課題

炭素材料の分子構造が見えにくい

炭素材料は、電池の電極や耐熱材料、構造材料に広く使われていますが、一般的な分析手法では分子構造を把握しにくい材料です。材料の化学的な性質を左右するエッジサイトの化学構造は、正確に捉えることが難しいとされてきました。構造が分からないままでは、性能の差がどこから生まれるのかを説明しにくくなります。

経験依存で材料開発が長期化

炭素材料の合成は企業や技術者が蓄えたノウハウを基に進められており、材料開発に時間とコストがかかりやすい状況です。リチウムイオン二次電池や燃料電池では、炭素電極の表面の化学構造を理解することが重視されています。構造を測る手段が限られたままでは、試作と評価の繰り返しが続きやすくなります。

他にも、炭素の表面の化学的な性質の理解の不足、構造の理解に基づく材料合成技術の不足、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • エッジサイト炭素原子が六角形の網目状に並んだ層(炭素網面)の端にある部分である。炭素材料の反応性を決める部位とされ、電池や触媒の材料開発で重視される。

ICTECHの強み|「高温昇温脱離分析」を研究

ICTECHが「高温昇温脱離分析」を研究

高温の脱離ガスで端を測定

赤外分光法(赤外線で化学結合を調べる方法)やX線光電子分光法(X線で表面の元素の状態を調べる方法)は、エッジサイトの詳しい分析では感度や精度に限界がありました。

ICTECHの「高温昇温脱離分析」は、真空中で炭素材料を1600℃以上まで加熱し、表面から離れる気体を質量分析計(気体の分子を重さで分けて測る装置)で捉える手法です。水素・一酸化炭素・二酸化炭素・水が離れる温度と量を解析すると、エッジサイトの総量と種類を特定できます。測れるエッジサイトの量は、10-4 at.%(原子の数の割合)の水準の微量な範囲にまで及びます。黒鉛や炭素繊維のように、エッジサイトが少ない材料も分析の対象です。端の構造を数値で比べられ、性能に差が出る要因を検討しやすくなります。

構造と性能の関係を数値化

構造を直接測れない状態では、性能の差がどの構造から生じているかを特定しにくく、改良の方向を決めにくくなります。

ICTECHは、エッジサイトの量と種類を性能のデータと照らし合わせ、エッジ構造と性能の相関を調べます。製造ロットごとの品質の差を定量的に評価できるため、品質基準の策定にも使えます。使用前後のエッジサイトの変化は、劣化の仕組みを探る手がかりです。エッジサイトの空間的な分布から、材料の不均一性を定量化する解析も対象です。試作と評価の繰り返しを減らせる可能性があり、新しい炭素材料の開発にかかる時間とコストを抑えやすくなります。

FrontJournalの解説
  • 質量分析計気体の分子をイオンにし、重さごとに分けて量を測る装置である。昇温脱離分析では、試料から離れた水素や一酸化炭素などの気体を見分けるために使われる。

高温昇温脱離分析の未来|受託分析から分子構造の可視化へ

高温昇温脱離分析が変える未来

炭素材料の受託分析を開始

ICTECHは、2025年10月に炭素材料の高精度分析サービスを開始しました。標準の分析パッケージは20万円(税別)からで、気体の脱離の測定とエッジサイト総量の定量、結果の報告とデータの解釈の支援を含みます。試料は通常数十mg程度で足り、オンラインの説明会にも対応します。対象は、リチウムイオン電池や燃料電池、半導体製造部材、工業材料など幅広い分野の材料です。

材料設計の支援へ拡大を計画

分析を入口に、炭素材料の材料設計に関わるコンサルティングへ事業を広げる計画を、ICTECHは掲げています。支援の対象は、エッジ構造と性能の相関に基づく材料設計です。新しい顧客の獲得に向けて、炭素材料の基準試料の販売も検討しています。いずれも、IJIE(甲信・北関東の大学などによる起業支援の連携組織)の採択課題で示された計画です。

分子構造の可視化を目指す

炭素材料の分子構造を目に見える形で示す手法の開発を、ICTECHは目指しています。採択課題で示された道筋は、現在の分子構造解析技術のさらなる発展です。炭素電極の表面の化学構造の理解が重視される電池や燃料電池では、エッジサイトの化学構造とその分布が鍵を握るとされています。構造を目で確かめられる手法が広がれば、電池や燃料電池に使う炭素材料を、構造の理解に基づいて設計しやすくなります。

会社概要|ICTECHの事業内容・設立背景

群馬大学の研究から設立

ICTECHは、2025年9月に設立されました。技術の基盤は、群馬大学大学院理工学府の石井孝文准教授が開発したエッジサイトの精密分析技術です。石井准教授は、2022年に炭素材料学会の研究奨励賞を「昇温脱離法による炭素エッジサイトの分析」で受賞しています。代表取締役は上田徹で、石井准教授は取締役・技術顧問を務めます。本社の所在地は、群馬県桐生市の群馬大学桐生キャンパス内です。

採択・連携

研究開発課題「炭素材料の革新的分子構造解析技術の開発」は、IJIEの「GAPファンド」(大学の研究を事業化へ橋渡しする資金)で、2024年度ステップ1「プレ」に採択されました。2025年8月には、この課題がJST(科学技術振興機構)の「スタートアップ・エコシステム共創プログラム」による支援の対象に選ばれています。技術面では、群馬大学の元素科学国際教育研究センターと連携しています。

分析と研究開発支援が柱

ICTECHの事業は、炭素材料の高精度分析サービス、高温昇温脱離分析による炭素エッジサイト分析、炭素材料の研究開発支援などです。分析の依頼は、公式サイトの問い合わせフォームで見積もりを受けてから始まります。

会社情報

会社名株式会社ICTECH(アイシーテック)
所在地群馬県桐生市天神町1丁目5番1号 群馬大学桐生キャンパス
設立2025年9月
代表代表取締役 上田 徹
事業炭素材料の高精度分析サービス、高温昇温脱離分析による炭素エッジサイト分析、炭素材料の研究開発支援
技術領域高温昇温脱離分析(H-TPD)。炭素材料のエッジサイト分析
連携群馬大学 元素科学国際教育研究センター
採択IJIE GAPファンド(2024年度ステップ1「プレ」)。JST スタートアップ・エコシステム共創プログラム
URLhttps://ictech.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

炭素材料は電池から工業材料まで幅広く使われる一方で、性能を左右する端の構造は見えにくい対象でした。ICTECHは、その端の構造を、高温で離れる気体から数値で示す分析を受託サービスとして提供しています。構造を数値で確かめられることは、材料開発の判断材料になります。

大学の研究室で培われた分析技術を、企業が依頼できる形に整えた点が特徴です。必要な試料は数十mg程度で、結果の解釈まで支援を受けられます。材料開発の現場で構造のデータを使えるようになれば、試作と評価の回数を減らせる可能性があります。

次の目標は、炭素材料の分子構造の可視化です。電池や燃料電池の材料を構造から設計できれば、開発の進め方は変わる可能性があります。その研究がどこまで進むのかに期待します。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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