オリゴジェン「ヒト神経幹細胞」を研究|髄鞘を作るオリゴデンドロサイトのイラスト

株式会社オリゴジェン

オリゴジェン「ヒト神経幹細胞」を研究|研究領域=神経を包む髄鞘を・作る細胞へ分化/強み=培養で10億倍以上・増える体性幹細胞/将来性=先天性の難病の・治験を準備

企業紹介|株式会社オリゴジェンとは?

脊髄損傷や難病の再生医療に向けて、研究が進む「ヒト神経幹細胞」。株式会社オリゴジェンは、その社会実装を目指す、バイオ系ディープテック企業です。同社の「オリゴジーニー」は、髄鞘(神経を包む絶縁体の膜)を作る細胞へ高効率に分化(別の細胞に変わること)します。同社はこの細胞を用い、再生医療製品の開発と創薬の研究に取り組んでいます。

キーワード「ヒト神経幹細胞」

「ヒト神経幹細胞」は、神経細胞、アストロサイト(神経の周りの環境を整える細胞)、オリゴデンドロサイトのもとになる幹細胞です。同社の「オリゴジーニー」は、このうち神経軸索(信号を送る長い突起)を包む髄鞘を作る、オリゴデンドロサイトへ効率良く分化します。同社は、この細胞を脊髄損傷などの再生医療へ生かす研究を進めています。

市場課題|髄鞘の形成不全や神経の断裂で、信号が伝わりにくくなる

現状の神経疾患の課題|現状は、髄鞘の形成不全や神経の断裂で信号が伝わりにくい|髄鞘の形成不全で・根本治療が難しい/脊髄の損傷で・麻痺が生じる

髄鞘が育たず根本治療が難しい

髄鞘が十分に作られないと、大脳の白質(神経線維が集まる部分)が正常に形成されず、運動や発達に影響が出ます。先天性大脳白質形成不全症は、遺伝子の異常で髄鞘の形成不全が起こる指定難病で、生後まもなくの眼振(目の揺れ)や発達遅滞、痙性四肢麻痺(手足のこわばり)といった症状が現れる疾患です。根本的な治療法が確立しておらず、対症療法(症状を和らげる治療)が中心です。

脊髄の損傷で麻痺が生じる

脊髄が損傷すると、神経の通り道が損なわれ、麻痺が起こります。従来の医療では、麻痺の回復につながる治療法が限られているといわれる状況です。日本の脊髄損傷の慢性期(発症から時間がたった時期)の患者は、10万人以上いるといわれています。

他にも、自己免疫で髄鞘が壊れる多発性硬化症、神経細胞が失われるアルツハイマー病、運動症状が進むパーキンソン病への対応、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 髄鞘神経細胞から伸びる軸索を包む、脂質に富む膜である。電線の被覆のように信号を絶縁し、神経の信号を速く正確に伝える。中枢神経では、オリゴデンドロサイトという細胞が作る。

オリゴジェンの強み|「ヒト神経幹細胞」を研究

オリゴジェンが「ヒト神経幹細胞」を研究|これまでに、培養で高効率な分化を実現|髄鞘を作る細胞へ・高効率に分化/増殖し移植で・神経再生を目指す

髄鞘を作る細胞へ高効率に分化

従来の神経幹細胞は、髄鞘を作るオリゴデンドロサイトへ分化する割合が低いといわれています。

「オリゴジーニー」とは、オリゴデンドロサイトへ効率良く分化できる、新しいタイプのヒト神経幹細胞です。血清(血液から取る液体成分)を含まない生体外の条件で、99%がオリゴデンドロサイトへ分化します。さらに、神経軸索の再延長(切れた軸索が再び伸びること)を促すポリシアル酸(糖が鎖状につながった物質)を、細胞の表面に出しているのも特徴です。髄鞘を作る細胞を高い割合で得られれば、髄鞘の形成不全を補う細胞医薬品への応用が期待され、患者の治療の選択肢が広がります。

増殖し移植で神経再生を目指す

ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、神経幹細胞へ誘導する工程が必要で、がん化の可能性にも配慮が要ります。

「オリゴジーニー」は、生体外の培養で10億倍以上に増える体性幹細胞(体の組織にある幹細胞)で、増えたあとも多様な神経の細胞へ分化する力を保ちます。ES細胞やiPS細胞のような誘導の工程が要らず、凍結と解凍のあとも細胞の生存率が高い点も、特徴です。損傷した脊髄へ移植すると、断裂した軸索の再延長、新しい髄鞘の再形成、細胞を守る因子の分泌といった作用が期待され、症状の改善につながると考えられています。大量に増やせるため、移植に使う細胞を用意しやすく、患者へ届けられる機会が広がります。

FrontJournalの解説
  • オリゴデンドロサイト中枢神経で髄鞘を作るグリア細胞(神経を支える細胞の総称)である。1つの細胞が複数の軸索に髄鞘を巻き付け、神経の信号が速く伝わる環境を保つ。

ヒト神経幹細胞の未来|脊髄損傷や難病から、神経疾患へ広げる

ヒト神経幹細胞が変える未来|共同研究と治験準備で先天性の難病に挑む|持田製薬と・足場材を共同研究/先天性の難病で・治験を準備/神経疾患へ・対象拡大を目指す

持田製薬と足場材を共同研究

2022年10月31日、同社は持田製薬株式会社と共同研究契約を結びました。両社が取り組むのは、再生医療製品の開発です。同社の幹細胞技術と、持田製薬が持つ足場材(バイオマテリアル、医療に使う材料)の技術を組み合わせます。実現すれば、患者に届ける再生医療製品の選択肢が増えます。

先天性の難病で治験を準備

先天性大脳白質形成不全症を対象とした治験(人での安全性と効果を確かめる試験)は、準備の段階にあります。治験で使う細胞については、品質を一定に保つマスター細胞バンク(細胞を均一な状態で保管する仕組み)の製造方法の確立を、研究テーマに掲げてきました。臨床用細胞を医薬品の製造基準に沿って製造する研究にも取り組んできました。治験が進めば、根本的な治療法が乏しい患者へ、新しい治療を届ける道が開けます。

神経疾患へ対象拡大を目指す

「オリゴジーニー」の対象を、多発性硬化症やアルツハイマー病などの神経疾患へ広げることが、同社の目標です。多発性硬化症では、有効性の検証が研究テーマです。アルツハイマー病に対しては、細胞が分泌するエクソソーム(細胞が出す微小な袋状の粒子)を使う治療の開発に取り組み、創薬では、オリゴジーニーを使って医薬品の候補になる物質を探す仕組みの開発にも取り組んでいます。実現すれば、治療の選択肢が限られてきた神経疾患の患者に、新しい治療手段が加わります。

会社概要|オリゴジェンの事業内容・設立背景

2015年8月に日本で設立

株式会社オリゴジェンは、2015年8月に東京都千代田区丸の内で設立されました。創業の中心となった代表取締役の城戸常雄は、2004年11月に米国でStem Cell Medicine, LLCを設立し、2011年1月に神経幹細胞「オリゴジーニー」を発見して、その大量培養方法を開発しました。2015年3月に、城戸は日本で治験を行うために帰国しています。本社は2018年8月にイノベーションハブ京都(京都大学内のインキュベーター施設)へ、2023年6月に京都市成長産業創造センターへ移りました。

採択と連携で研究を推進

同社は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の2015年度と2017年度の事業に採択されました。公益財団法人京都産業21の2019年度・2021年度・2024年度の事業、ASTEM(公益財団法人京都高度技術研究所)の2021年度の事業、全国商工会連合会の小規模事業者持続化補助金にも、採択されました。研究面では、2016年4月に筑波大学の研究室と共同研究を始め、2022年10月には持田製薬と共同研究契約を結んでいます。

第三者割当増資で資金を調達

同社は、2017年8月にシリーズA-1、2020年1月にシリーズA-2の第三者割当増資(特定の投資家に新株を発行する方法)を行いました。シリーズAは、事業を本格化させる初期の資金調達段階にあたります。2021年11月には、クラウドファンディングによる新株予約権(将来、株式を取得できる権利)を発行して、資金を調達しました。

会社情報

会社名株式会社オリゴジェン(Oligogen, Inc.)
所在地京都府京都市伏見区治部町105番地 京都市成長産業創造センター
設立2015年8月
代表代表取締役 城戸常雄
従業員4名(2024年4月現在、代表取締役及び非常勤を含む)
事業ヒト神経幹細胞「オリゴジーニー」を用いた細胞治療・エクソソーム治療・創薬の研究開発
技術領域ヒト神経幹細胞の分化制御と大量培養
連携持田製薬株式会社、筑波大学の研究室
採択NEDO、公益財団法人京都産業21、公益財団法人京都高度技術研究所(ASTEM)、全国商工会連合会
URLhttps://oligogen.jp

編集後記|FrontJournal編集部より

オリゴジェンの研究は、髄鞘という、普段は意識しにくい構造に着目しています。神経の信号を伝える線を包む膜を作り直す、という発想は、神経疾患の治療を考えるうえで分かりやすい切り口です。髄鞘の損傷が症状につながる、という視点も、再生医療の対象を理解する手がかりになります。

細胞の性質を確かめ、治験に必要な製造方法を整え、対象とする疾患を一つずつ広げていく歩みは、時間のかかる道のりです。それでも、治療の選択肢が限られてきた病気に向き合う姿勢に、再生医療ベンチャーの役割の大きさを感じます。研究と、治験に向けた製造方法の整備を並行して進める点にも、特徴を感じました。

髄鞘を作る細胞が、損なわれた神経の働きを取り戻す日が来ることを期待しています。そのために必要な治験や製造の整備が、今後の注目点です。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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