PriMateria「木材液化樹脂」を研究|木材と樹脂の成形品を描いたイラスト

株式会社PriMateria(プリマテリア)

PriMateria「木材液化樹脂」を研究|研究領域=木材を丸ごと・液体にして樹脂に/強み=分ける工程なしで・そのまま液化/将来性=石油由来の素材・を置き換える

企業紹介|株式会社PriMateriaとは?

木材から樹脂の原料を得る技術として、注目を集める「木材液化樹脂」。株式会社PriMateriaは、その社会実装を目指す、京都大学発の素材系ディープテック企業です。木材を原料とする樹脂と、その用途に合わせた成形材料を、商社や化学系の企業へ向けて開発しています。

キーワード「木材液化樹脂」

「木材液化樹脂」は、木材を薬品とともに加熱して液体へ変え、それを原料として製造する樹脂です。特徴は、木材をセルロースやリグニンといった成分に分けずに、丸ごと使える点にあります。自動車の部品や食器、断熱材など、身の回りにある成形品や発泡体に応用できます。

市場課題|樹脂の原料を石油から植物へ置き換える動きが広がる

現状の樹脂の原料の課題|現状は、石油に依存し木材の分離に費用がかさむ|樹脂の原料は・石油に依存/セルロースなどを・分ける工程に費用

脱炭素で石油樹脂が使いにくい

身の回りのプラスチック製品の多くは、石油を原料とする樹脂から製造されています。自動車の内装部品や食品の包装材も同じです。原料の採取から廃棄までの過程で二酸化炭素が発生するため、脱炭素の要請が強い産業ほど、石油由来の樹脂を使い続けにくくなると見込まれます。

分離の工程で価格が下がりにくい

バイオマス(生物に由来する資源)を原料とする素材は、価格が下がりにくい状況です。代表的な木材は、セルロースやリグニン(木の幹を固くしている成分)が絡み合った材料で、従来はこれらを薬品や熱で取り出してから原料に使ってきました。分離の工程に薬品とエネルギーを要するため製造費用がかさみ、石油由来の樹脂と価格で並ぶことが容易ではありません。

他にも、木材を安定して集める調達の難しさ、樹種や部位で生じる成分のばらつき、既存の設備で扱えるかという加工適性の確認、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • リグニン木材の細胞壁でセルロースの繊維どうしを接着し、幹を固くしている高分子を指す。芳香環を多く含んで化学的に安定しているため、取り出すには強い薬品や高い温度を要する。

PriMateriaの強み|「木材液化樹脂」を研究

PriMateriaが「木材液化樹脂」を研究|今後は、成分を分けず費用の抑制が可能に|木材から・石油代替の樹脂/成分を分けず・費用を抑える

木材から石油代替の樹脂

石油から製造する樹脂は、骨格となる炭素をすべて地下資源から得るため、森林の資源を原料に取り込めません。

「木材液化樹脂」は、木材をフェノール(樹脂の原料に広く使われる化合物)やポリオール(発泡体の原料になる化合物)とともに加熱し、液体へ変えてから固める樹脂です。木材の中身は、炭素と水素と酸素からなる複数の高分子です。酸を触媒として加えると、成分ごとに取り出さないまま、薬品と結びついて液体になります。その液体をさらに加熱すると分子どうしが網目状につながり、熱に強い熱硬化性樹脂になる点が特徴です。樹脂の骨格に国内の木材を使えるようになり、樹脂を扱う企業は原料を地下資源だけに求めずに済みます。

分離工程を省き省エネで製造

従来の木材由来素材は、成分ごとに取り出す工程で薬品と熱を使うため、製造の費用と消費エネルギーが大きくなります。

同社の技術は、木材を成分に分けず、丸ごと液化する点に特徴があります。セルロースもリグニンも同じ反応液のなかで分解と溶解が進むため、成分を分ける工程を別に設ける必要がありません。液化に使う薬品を選び分けることで、硬化させて成形品にする「フェノール液化樹脂」と、発泡体の原料になる「ポリオール液化樹脂」を作り分けられます。液化に用いる薬品と熱は必要ですが、分離の工程を別に設けないぶん、工程の全体では従来の素材より製造費用を抑えられると期待されています。

FrontJournalの解説
  • ポリオール分子の中に水酸基を複数持つ化合物の総称を指す。イソシアネートと反応させるとポリウレタンになり、断熱材や緩衝材などの発泡体の原料として広く使われる。木材を液化する薬品にも用いる。

木材液化樹脂の未来|日用品から車載部品まで用途を広げる

木材液化樹脂が変える製品の未来|日用品から車載部品まで用途が広がる|試作した樹脂が・規格の基準に到達/車載部品や・電気部品へ展開/石油由来素材の・置き換えを目指す

規格の物性基準に到達

試作した樹脂は、日本産業規格(JIS)が定める物性の基準に達したとされています。フェノール液化樹脂を硬化させた成形物は、網目状につながった熱硬化性樹脂です。想定されている用途は、お椀やトレイのような日用品や、各種のパッケージです。まず日用品から、その素材を木材由来へ置き換える道が開けます。

車載部品や電気部品へ展開

同社が見据えるのは、産業向けの部品への展開です。硬化させた成形物としては、車載部品や電気部品、プリント基板の土台になる銅張積層板への応用が想定されています。ポリオール液化樹脂から得られるポリウレタンの発泡体は、緩衝材や断熱材、植物を育てる苗床などが用途です。素材として供給する形のため、部品を製造する企業は既存の成形設備を活かせる可能性があります。

石油由来素材の置き換えを目指す

同社が目指すのは、石油由来の素材木材由来の樹脂へ置き換えることです。木材を成分に分けずに使う方法は、分離の工程が要らないぶん製造に要するエネルギーが少なく、原料も森林の木材であることから、低炭素化につながるといわれています。用途によっては、生分解(微生物の働きで分解されること)の速さを調節できる点も特徴です。国内の木材が素材の原料になれば、資源の循環と脱炭素の両方に寄与できます。

会社概要|京都大学の木材研究から生まれたPriMateria

京都大学の研究から創業

株式会社PriMateriaは、2025年2月に京都市で設立された、京都大学発のスタートアップです。代表取締役の吉岡まり子氏は、京都大学大学院農学研究科で木材の液化と樹脂化を研究してきた研究者です。バイオマス、液化、ポリウレタン、生分解性、セルロースナノファイバー(木材から取り出した極細の繊維)などを研究のキーワードに掲げ、木材を高付加価値の材料へ変える手法を手がけてきました。大学で積み重ねた成果を産業で使える素材にすることを目的に、同社を設立しました。

大学発ベンチャーの登録と特許

同社は、経済産業省の「大学発ベンチャーデータベース」に、京都大学の研究成果ベンチャーとして登録されています。研究成果ベンチャーは、大学の研究から生まれた技術をもとに設立された企業を指す区分です。木材を液化して樹脂にする中核の技術「フェノール液化樹脂」に関する発明を含め、国内で3件の特許を保有しています。

商社や化学企業への提供を想定

ビジネスモデルは、樹脂を素材として供給する形です。想定する顧客は商社や化学系の企業で、資本金は1000万円です。同社は概念実証(実際に成り立つかを試すこと)を終え、製品としての開発を進めています。

会社情報

会社名株式会社PriMateria(PriMateria Corporation)
所在地京都府京都市右京区山ノ内御堂殿町13-15
設立2025年2月6日
代表代表取締役:吉岡 まり子
資本金1000万円(2025年度時点)
事業木材のフェノール液化樹脂およびポリオール液化樹脂を用いた製品開発
技術領域木材を成分分離せずに液化して樹脂を製造する技術。国内特許3件(コア技術の発明名称:フェノール液化樹脂)
連携京都大学(研究成果ベンチャー)

編集後記|FrontJournal編集部より

木を素材に使う話は、これまで「分けてから使う」が前提でした。セルロースを取り出し、リグニンを取り出し、それぞれに合う用途を探す。その手間が、そのまま費用になっていました。分けることが前提だったという整理の仕方を、あらためて確かめました。

PriMateriaが選んだのは、分けないという選択です。単に工程を省いただけでなく、木材という複雑な材料を複雑なまま樹脂へ変える発想で、費用と環境負荷の両方を下げようとしています。研究室で長く積み重ねた化学の知見があってこそ成立する道筋だと感じます。

お椀から車載部品まで、森から生まれた樹脂が並ぶ日を楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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