ペプチドリーム|「特殊環状ペプチド」を研究

ペプチドリーム株式会社(PeptiDream)

ペプチドリーム「特殊環状ペプチド」を研究|研究領域=環状につないだペプチドの医薬品/強み=10兆種類から候補を選び出す/将来性=がんの診断薬や飲み薬へ広がる

企業紹介|ペプチドリーム株式会社とは?

低分子医薬品でも抗体医薬品でも狙いにくい創薬ターゲット(薬作りの標的となる分子)に届く手段として、注目を集める「特殊環状ペプチド」。ペプチドリーム株式会社は、その「特殊環状ペプチド」を医薬品として実用化することを目指す、東京大学発の創薬系ディープテック企業です。「PDPS」を国内外の製薬企業へ、放射性医薬品を医療の現場へ提供しています。

キーワード「PDPS」(創薬開発プラットフォームシステム)

「PDPS」は、狙ったタンパク質に結合する「特殊環状ペプチド」を探し出すための基盤です。特徴は、10兆種類以上のペプチドライブラリーから候補を選び出せる点にあります。同社は、狙ったタンパク質に結合する候補ペプチドを約1か月で見出せるとしています。

市場課題|狙いにくい創薬ターゲットと長い探索

現状の医薬品開発の課題|現状は、狙える標的が限られ探索も長期化/低分子は広い面に結合しにくい(タンパク質の表面と低分子)/候補の探索に長い時間を要する(化合物ライブラリ)

狙いにくい創薬ターゲットが残る

医薬品市場の半分程度を占めるといわれる低分子医薬品にも、狙いにくい創薬ターゲット(薬作りの標的となる分子)が残っています。低分子は小さいため、平らで広い面を持つ相手や、細胞の中で他のタンパク質と組み合わさった相手に結合しにくいからです。こうした相手は有望でも創薬には結び付きにくく、治療の選択肢が乏しい病気が残ります。

候補探索に長い時間を要する

狙う創薬ターゲットが決まっても、結合する候補分子を見つけるまでには長い時間がかかります。膨大な化合物を一つずつ試す手法では、目的の分子に行き着く確率が低いためです。探索が長引くほど開発費は膨らみ、着手できる創薬ターゲットの数も限られます。

他にも、鎖状のペプチドは体内で早く分解されるため飲み薬にしにくいこと、大量合成が複雑なこと、手本となる分子がない場合に設計の起点が乏しいこと、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 創薬ターゲット薬を効かせたい相手にあたるタンパク質。薬が結合すると、病気に関わる働きを抑えられる。
  • ペプチドアミノ酸が数個から数十個つながった分子。低分子より大きく抗体より小さく、両者の弱点を補う候補として研究されている。
  • 低分子医薬品分子量がおおむね500以下の小さな分子からなる医薬品。細胞の中まで届きやすく、飲み薬にしやすい。
  • 抗体医薬品免疫が異物を見分ける抗体を成分とする医薬品。分子が大きく細胞膜を通れないため、創薬ターゲットは細胞の外側に限られる。

ペプチドリームの強み|「特殊環状ペプチド」の探索

ペプチドリームが「特殊環状ペプチド」を開発|今後は、環状化で難しい標的の創薬が可能に/非天然アミノ酸で物性を調整する(アミノ酸と非天然アミノ酸)/約1か月で候補を特定する(10兆種類のペプチドから選ばれた候補)

難しい創薬ターゲットにも届く

天然のアミノ酸をつないだ鎖状のペプチドには、体内の酵素で分解されやすく、投与後に長くとどまりにくい弱点がありました。

「特殊環状ペプチド」は、アミノ酸を環状につないで構造の自由度を抑えた分子です。環にすると創薬ターゲット(薬作りの標的となる分子)への結合力と選択性が上がり、体内での安定性も高まります。同社が持つのは、3,000種類を超える非天然アミノ酸をペプチドへ組み込む技術です。組み込むアミノ酸を選ぶことで、体内で分解されにくい、細胞膜を通りやすいといった性質を調整します。抗体が届きにくい細胞の中の相手にも、低分子が結合しにくい広い面の相手にも、同社はこの技術で結合する薬を設計できます。

約1か月で薬の候補を発見

創薬の探索では、候補にたどり着くまでに長い時間がかかり、見つかるかどうかも読みにくい状況でした。

「PDPS」は、無細胞系(試験管内でペプチドを合成する仕組み)で10兆種類以上のペプチドライブラリーを構築する基盤です。一つひとつのペプチドには、並び順を記録した札にあたるmRNAを結び付けてあります。10兆種類を一度に創薬ターゲットへかけ、結合したものだけを回収して札を読めば、当たりのペプチドの並び順が分かります。この仕組みなら混ぜたまま当たりを見分けられるため、一つずつ試す必要がありません。同社は、ヒット化合物を95%以上の確率で約1か月で見出せるとしています。

FrontJournalの解説
  • 非天然アミノ酸生体のタンパク質には通常使われないアミノ酸。ペプチドに組み込むと、安定性や膜の通りやすさを調整できる。
  • ペプチドライブラリー配列の異なるペプチドを大量に集めた化合物群。多様性が高いほど、創薬ターゲットに合う分子が見つかる確率が上がる。
  • ヒット化合物創薬ターゲットに結合することが確かめられた候補分子。ここを起点に構造を最適化し、臨床で試す候補へ仕上げる。

「特殊環状ペプチド」の未来|医薬品開発への広がり

標的に届くペプチドが変える未来|がんの治療から飲み薬へ広がる/放射性医薬品でがんを狙う/注射から飲み薬のペプチドへ/製薬企業が使う共通の創薬基盤

放射性医薬品でがんを狙う

子会社のPDRファーマが手がける放射性医薬品では、実用化が先行しています。創薬ターゲット(薬作りの標的となる分子)に結合する分子に放射線を出す原子(核種)を結び付け、がんの組織へ選択的に届けます。第3相試験の段階にあるのは、前立腺がん向けの診断薬と治療薬、悪性脳腫瘍向けの治療薬です。いずれも他社が見つけた低分子を導入したもので、国内の承認申請と販売はPDRファーマが担います。「PDPS」で見つけたペプチドに核種を結び付ける自社の複合体では、腎細胞がんを対象とするプログラムが第1相の段階、胃がんを対象とするプログラムでは、最初の患者への投与が始まった段階です。

経口ペプチド医薬品へ拡大

次に見えているのは、注射に代わる経口のペプチド医薬品です。同社は肥満症や筋疾患を対象とする経口ミオスタチン阻害薬を、臨床試験の準備段階まで進めています。乾癬(皮膚に炎症が続く病気)などでも、飲み薬の研究が進みます。

創薬の共通基盤を目指す

同社が目指すのは、ペプチド創薬の共通基盤としての役割です。「PDPS」を国内外の製薬企業へライセンスし、共通の土台で候補分子を探す仕組みを広げる方針です。抗がん剤を運ぶ複合体(PDC)への応用も見込まれます。難しい創薬ターゲットへの選択肢を増やし、治療法の乏しい病気に届く薬を目指します。

FrontJournalの解説
  • 放射性医薬品放射線を出す原子を含む医薬品。病巣を画像で調べる診断と、病巣へ放射線を届ける治療の双方に用いる。
  • 第3相試験承認申請の前に多数の患者で行う臨床試験。既存の治療と比べて有効性と安全性を確かめる段階にあたる。
  • ミオスタチン筋肉の量を増えすぎないよう抑える働きを持つタンパク質。その働きを妨げる薬は、筋肉が減る病気の治療で研究されている。

会社概要|ペプチドリームの事業内容

東京大学の研究から創業

ペプチドリーム株式会社は、2006年7月に東京都千代田区で設立されました。創業の中心は、「フレキシザイム」(人工のアミノ酸をペプチドに組み込む酵素技術)を開発した東京大学教授の菅裕明氏です。研究室は当初、東京大学先端科学技術研究センター内にあり、同年12月には関連特許の独占的な実施権を得ました。

提携と子会社で領域を広げる

同社は、国内外の製薬企業との提携を重ねてきました。ノバルティスやメルクとの共同研究開発や技術ライセンスによるプログラムが、臨床の段階へ進んでいます。提携先を含むパイプライン全体では、2026年上期に6件が新たに臨床試験へ進みました。同社は2017年に塩野義製薬などとペプチド原薬の製造受託会社ペプチスターを、2020年に三菱商事とペプチグロースを設立しています。2022年3月には、富士フイルム富山化学からPDRファーマの株式を取得し、子会社としました。

事業収入で開発を続ける

同社は2013年6月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2022年4月にはプライム市場へ移りました。上場以降、株式による資金調達を行っていません。開発を支えるのは、提携時の契約一時金、開発の進み方に応じたマイルストン、提携先の製品からのロイヤルティ、放射性医薬品の販売です。連結の従業員数は、2025年12月末時点で751名です。

会社情報

会社名ペプチドリーム株式会社(PeptiDream Inc.)
所在地〒210-0821 神奈川県川崎市川崎区殿町3-25-23
設立2006年7月に東京都千代田区で設立。2017年7月に川崎市へ本社と研究所を移転
代表代表取締役社長CEO リード・パトリック。菅裕明(東京大学教授)、窪田規一(元取締役会長)
上場東京証券取引所プライム市場(証券コード4587)。2013年6月マザーズ上場、2015年12月市場第一部、2022年4月プライム市場
従業員連結751名(2025年12月末時点)
事業PDRファーマ株式会社(100%子会社)。ペプチグロース株式会社、ペプチエイド株式会社(持分法適用会社)。ペプチスター株式会社
技術領域創薬開発プラットフォーム「PDPS」。特殊環状ペプチド、ペプチド薬物複合体(PDC)、多機能ペプチド複合体(MPC)、放射性医薬品
連携ノバルティス、メルク、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、旭化成セラピューティクス、Curium、RayzeBio など
URLhttps://www.peptidream.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

薬の形は、分子の大きさによって守備範囲が決まってきました。細胞の中まで届く小ささと、狙いを外しにくい大きさ。この両方を1つの分子で満たせないか。ペプチドリームが取り組んできたのは、この問いに答えを出すことでした。

興味深いのは、薬そのものではなく探し方を事業にした点です。「PDPS」を使う製薬企業が増えるほど、そこから生まれる提携が次の開発を支えます。創薬の入口を担う立場が、20年の開発を支えてきたようにも見えます。

東京大学の酵素技術から始まった仕組みが、まだ薬のない病気にどこまで届くのか。今後の臨床試験に注目します。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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