Letara株式会社|プラスチックを燃料とする衛星用ハイブリッド推進を開発する北海道大学発スタートアップ

Letara株式会社(レタラ)

Letaraの研究領域・強み・将来性をまとめた図解

企業紹介|Letara株式会社とは?

打ち上げ後の小型衛星を目的の軌道へ移動させる推進系「衛星用ハイブリッド推進」が、宇宙業界の注目を集めています。Letara株式会社は、この技術の社会実装を目指す北海道大学発のディープテックスタートアップです。北海道大学の永田晴紀教授が考案した「CAMUI型」の燃焼技術をもとに、プラスチック燃料の推進系を開発しています。2026年の宇宙実証に向けて、地上試験を重ねている段階です。

キーワード「衛星用ハイブリッド推進」

衛星に搭載するハイブリッド推進は、固体の燃料と液体の酸化剤を機体の別々の場所に積み、必要なときだけ反応させる方式です。固体ロケットは点火後も燃焼が続き、液体燃料と液体酸化剤を用いる二液式は配管が複雑になります。ハイブリッド推進は両者の中間にあたり、構造を簡素に保ちながら推力を調整できます。

市場課題|衛星用推進剤の毒性と推力制御

現状の衛星用推進系が抱える課題を示した図解

従来の衛星用推進剤は毒性が強い

衛星用エンジンで長く使用されてきたヒドラジンは、毒性が強い点が課題です。取り扱いには専用設備と防護装備が必要で、安全審査にも時間を要します。小型衛星の打ち上げが急増するなか、燃料の扱いにくさが費用と開発期間を押し上げています。

固体燃料は推力制御が難しい

毒性の低い方式では、推力の制御が新たな課題となります。固体燃料は点火後の出力調整に制約があり、電気推進は推力が小さく軌道の変更に時間を要する方式です。毒性のある推進剤は給油のたびに防護服と専用の設備を要するため、安全性と制御性の両立が衛星開発の課題となっています。

他にも、安全審査の長期化や機体の重量増といった課題が積み重なってきました。

FrontJournalの解説
  • ヒドラジン人工衛星の推進系で広く使われてきた液体燃料である。毒性が強く、取り扱いに専用設備を要する。
  • 電気推進電気の力でイオンなどを噴射して進む方式を指す。推力が小さく、急な軌道変更には時間を要する。

Letaraの強み|衛星用ハイブリッド推進

Letaraの衛星用ハイブリッド推進の強みを示した図解

樹脂燃料による高い安全性

Letaraのハイブリッド推進とは、固体のプラスチックを燃料に、液体の酸化剤と組み合わせて燃やす方式です。プラスチックは常温では固体のまま保たれ、液体の酸化剤と接触して初めて燃焼します。燃料と酸化剤を分けて搭載する構造のため、保管と輸送のどちらでも発火しにくい状態を保てます。ヒドラジン(毒性の強い従来の推進剤)と比べれば、防護装備の負担が軽減され、安全審査の手続きも円滑に進められる点が特徴です。この扱いやすさは、衛星の打ち上げ準備の期間短縮にもつながると期待されています。

再点火と推力調整による軌道制御

Letaraのエンジンは、液体の酸化剤の供給量を制御することで推力を自在に調整できます。酸化剤を止めれば燃焼も止まり、必要に応じて再点火できるため、軌道の微調整にも緊急の回避噴射にも対応できます。この制御を支えるのが、北海道大学で開発された「CAMUI型」の燃焼技術です。2025年7月には将来宇宙輸送システム株式会社と共同で燃焼試験を実施し、推力5000Nで7秒間の安定燃焼を確認しました。衛星向けのプラスチック燃料エンジンについては、この共同開発とは別に地上試験を重ね、小型化を進めています。

FrontJournalの解説
  • 固体のプラスチック炭化水素を主成分とする固体燃料である。単体では常温で固体のまま保たれるため、打ち上げ前の保管や輸送を安全に進められる。
  • 液体の酸化剤燃焼に必要な酸素を供給する液体である。供給量を弁で調整することで、推力の強弱や、停止と再点火を制御できる。
  • 「CAMUI型」の燃焼技術永田晴紀教授が考案した、燃料内部に空洞を設けて燃焼面を保つ構造のエンジンである。単純な円筒形より安定して燃焼する。

未来|小型衛星の軌道変更を支える

Letaraのハイブリッド推進が広げる応用先を示した図解

宇宙のラストワンマイル輸送

安全な推進系が普及すれば、1機のロケットで打ち上げた複数の小型衛星が、それぞれ目的の軌道へ移動できるようになります。複数の衛星をまとめて打ち上げる相乗りでも、各機を狙いどおりの位置へ導くこの行程が「宇宙のラストワンマイル」です。衛星が計画した位置に並べば、地球を観測する頻度と精度が上がります。その結果、天気予報や地図、災害情報の更新頻度も向上します。

200kg級衛星へ推進系を供給

主な市場となるのは、質量200kg以下の小型宇宙機です。同社はこの領域に向けた軌道変換用推進系の提供を進めています。需要は通信や地球観測にとどまらず、安全保障や科学観測にも広がる見通しです。その打ち上げを担うロケット側でもIsar Aerospaceなどが台頭し、小型衛星が軌道へ向かう機会は増えています。

デブリ増加の抑制を目指す

スペースデブリの増加は、世界共通の懸案です。役目を終えた衛星を大気圏へ再突入させるデオービットにも、この推進系は応用できます。軌道上の物体を減らすことは、衛星どうしの衝突リスクを下げる有効な手段です。同社は、軌道の選択から離脱までを推進系が担う運用の定着を目指しています。

FrontJournalの解説
  • 宇宙のラストワンマイル打ち上げた衛星が、搭載した推進系で目的の軌道へ移動する最後の行程を指す。衛星の運用自由度を左右する。
  • デオービット運用を終えた衛星を大気圏へ再突入させ、軌道から離脱させることを指す。軌道上のスペースデブリを削減する手順である。
  • スペースデブリ軌道上に残された衛星やロケットの破片である。運用中の衛星に衝突すると大きな被害につながる。

会社概要|Letaraの事業内容・設立背景

北海道大学の研究を産業へ実装

Letaraは、北海道大学で積み上げられてきたハイブリッド推進の研究を社会に実装するため、2020年6月に設立されました。研究室で培われた燃料の配合と燃焼制御の技術を、衛星に搭載できる製品へ実用化する役割を担います。共同創業者は、平井翔大氏、ケンプス・ランドン・トマス氏、永田晴紀教授です。本社は札幌市西区、燃焼試験の研究開発拠点は北海道滝川市に置いています。

国の支援事業で軌道上実証を実施

開発は、国の支援事業の活用と、研究機関との連携を軸に進んできました。2023年7月には、経済産業省のGo-Tech事業に採択されています。JAXA・東京大学・東京都立大学とも、軌道上実証へ向けた開発が進行中です。2025年度からはNEDOの支援事業でPCAフェーズに採択され、2026年度までの支援額は約10億円です。同事業では、サブスケール(実物より小さい試験機)による宇宙実証を計画しています。

累計約18億円を調達

補助金を含めた累計調達額は、2025年6月時点で約18億円です。2025年6月にはシードラウンドの最終クローズを発表し、このラウンドで8億円を調達しました。新たな出資者は、Frontier Innovations1号投資事業有限責任組合です。シードラウンドは、事業構想を製品として実証する初期の段階にあたります。調達した資金は、2026年の宇宙実証へ向けた研究開発の加速に充てられます。

会社情報

会社名Letara株式会社(Letara Ltd.)
所在地北海道札幌市西区発寒9条10丁目2-10
設立2020年6月
代表共同CEO:平井 翔大/ケンプス・ランドン・トマス。
CTO:永田 晴紀(北海道大学 教授・CAMUI型ハイブリッドロケットの考案者)
調達累計約18億円(2025年6月時点・補助金を含む)。
シードラウンド最終クローズ時の調達額は8億円。Frontier Innovations1号投資事業有限責任組合/インキュベイトファンド/全日空商事 ほか
技術領域小型宇宙機向けハイブリッド推進システム(プラスチック燃料+液体酸化剤)
連携JAXA/東京大学/東京都立大学/将来宇宙輸送システム。北海道大学
採択NEDO ディープテック・スタートアップ支援事業 PCAフェーズ(支援額998百万円・2025〜2026年度)/経済産業省 Go-Tech事業/J-Startup
URLhttps://www.letara.space/

編集後記|FrontJournal編集部より

衛星が計画どおりに軌道を移動できるかどうかは、小型の推進系の性能に左右されます。その衛星が届けるデータは、毎日の天気予報にも、スマートフォンの地図にも、広域災害時の被害状況の把握にも使われています。人工衛星のエンジンは、社会インフラを支える技術です。

Letaraの取り組みで注目すべきは、安全性と性能を両立させようとしている点です。扱いやすいプラスチックを選びながら、燃焼を停止して再び点火するという高度な制御の実現にも取り組んでいます。北海道大学で培われた燃焼研究が、そのまま宇宙で試される段階に入りました。

小型衛星が推進系を積んで軌道を選べるようになれば、宇宙の利用範囲はさらに広がっていくはずです。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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