2026.08.22
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東京大学
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元発表:2026.08.20
東京大学、原子スケール二重スリットで原子振動を観測
ニュース紹介
「「極小の二重スリット」で隣り合う原子の揺れを観測」
東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構の柴田直哉機構長・教授、田畑浩大特別研究員(JSPS特別研究員)、関岳人准教授、石川亮特任准教授らの研究グループは、ウィーン大学のToma Susi准教授の協力を得て、走査透過電子顕微鏡(STEM)を用い、シリコン結晶で136ピコメートルだけ離れて隣り合う2本の原子列の間に細く絞った電子線を入射することで、原子スケールの二重スリット実験に成功したと発表しました。約200年前にヤングが考案した二重スリット実験の約1000万分の1のスケールに相当し、干渉現象から隣り合う原子の振動を直接測定できることを示しています。原子の揺れ方は熱の伝わり方に関係しており、半導体内部の熱の流れを原子レベルで調べることで、効率的な放熱設計に役立つと期待されるとしています。研究成果は2026年8月19日付でNatureのオンライン版に掲載されました。
出典:科学技術振興機構(JST)・東京大学 2026年8月20日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260820-4/index.html
FrontJournalの解説
この研究分野について
スマートフォンやパソコンに使われる半導体は、性能が上がり回路が細くなるにつれて発熱の制御が大きな課題になっています。素子の中で熱がうまく逃げないと、動作の安定性や寿命に影響します。
熱の伝わり方は、物質を構成する原子の振動(フォノン)によって決まります。ただし、隣り合う原子どうしがどのように協調して揺れているかを、原子1つ1つの位置で調べることは容易ではありません。半導体の放熱設計を進めるうえで、原子レベルの振動を実測する手段が求められてきました。
①走査透過電子顕微鏡で「極小の二重スリット」を実現
研究グループが用いたのは、細く絞った電子線を試料に当てて像を得る走査透過電子顕微鏡(STEM)です。シリコン結晶の中で、136ピコメートル(1ピコメートルは1兆分の1メートル)だけ離れて隣り合う2本の原子列を「2つのスリット」と見立て、その隙間に電子線を通しました。
電子線が2本の原子列の間を通る際に生じる干渉のパターンを解析することで、隣り合う原子の振動を直接測定できることを示したとしています。ヤングが行った古典的な二重スリット実験に対し、スリット間隔は約1000万分の1のスケールになります。
②半導体の放熱設計への手がかり
フォノンの伝わり方は、素子中の熱抵抗や発熱ムラを決める基本要素です。原子スケールで振動を測れるようになれば、界面や欠陥の近くで熱がどのように流れるかを直接調べる手がかりになります。
研究グループは、この手法が効率的な放熱設計に役立つと期待できると説明しています。成果は2026年8月19日付でNatureのオンライン版に掲載されました(DOI:10.1038/s41586-026-10914-9)。
編集部からひとこと
「原子1個ずつの振動を測れるか」は、電子顕微鏡の分野で長らく重要な課題として意識されてきたテーマです。今回はシリコンという半導体の主役材料で、既存の走査透過電子顕微鏡を活用して測定に踏み込んでいる点が特徴です。半導体プロセスの現場で扱われる材料に、そのまま応用の道筋が見える研究といえます。
本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。
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